インタビュー
コミュニティが自走の「臨界点」を超えにくくなる問題への処方箋
2021.02.24
*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。
コミュニティーマーケターのイベント「CMC Meetup」で20:00~20:25のセッション2「オンラインで進むコミュニティの “セミナー化”を防ぐには?」に登壇するに際し、考えをまとめておきます。
事前にご覧頂き、可能なら質問も持ってご参加頂けると、限られた時間の中でより良い知見の共創ができるのではとの意図です。
前編では、「コミュニティ」と「セミナー/イベント」の違いについて説明しました。
※本論では「セミナー」はイベントと同義と捉え、イベントの方がより幅広いものとして「イベント」で統一しています
後編では本題の「セミナー化(本稿ではイベント化)」の原因と対策について述べます。
症状:自発的活動が起こるまでのメンバー間の関係構築ができない
前編で述べたことをおさらいします。
まず、コミュニティをイベントと区別する前提として、メカニズムについて述べました。
コミュニティの基本メカニズム
1)コミュニティには、何かしらの「目的」がある。
そしてそれに基づき、何をする・しない、誰を入れる・入れないを判断する「軸」がある
2)「メンバー」は、その場の目的や軸に賛同し、かつ、場からも選ばれてコミュニティに入る
3)メンバー同士が「つながり」、場の趣旨に沿って自主的に公式・非公式の「活動」をしていく
4)そうしてメンバーは「コミュニティの価値向上に貢献」し、同時に、メンバーも何かしらのベネフィットを得る「相互利益構造」が成り立つ
5)その「拡大再生産サイクル」が回ることで、価値ある活動が次々と生まれて場が活性化する
その上で、「イベント化」がどのようにコミュニティに影響するかを書きました。
- 1)コミュニティはメンバー同士の持続的な繋がりが成立の前提だが、イベントは単回で完結しており、横の関係がない
2)メンバー同士の繋がりは自主活動のベース。それが弱くなる「イベント化」は、コミュニティの活性と自律的成長の原動力が失われることにつながる
3)自主活動がなくなれば、主催者が何かを企画・推進しない限り、誰も何もやらなくなる。
4)主催者が一方的に価値を提供し、メンバーはただそれを消費するだけの場は、コミュニティではない。
主催者のお金や思いが尽きたら「終わり」
原因:なぜオンラインになると横の関係ができにくくなるのか
コロナ後、オンライン化に伴って、こんな経験はないでしょうか。
●オンラインイベントに参加して、ブレイクアウトなどで話が盛り上がったものの、特にその後繋がらなかった
●最初からオンライン完結で仕事をしていたが、一度対面で会ってみたら急にやりとりがスムーズになった
つまり、人は無意識的にオンラインで関係を構築しにくいということです。
但し、後で詳しく述べますが、全くできない訳ではありません。
また、元々関係のベースがある人なら、オンラインでのやりとりを通してつながりを深めることはできますが、「種」となる最初の関係性がないと、なかなかそうはなりません。
その「種」を作るの圧倒的に対面の方が有効です。
人は人を総合的な情報で人を判断します。
身だしなみや姿格好のディテール、目の輝き、ちょっとした時の表情や声のトーン、体の動きなどは、対面でしか分かりません。
それで必ずしも人が見抜ける訳でないし、それを逆手に取って人を騙す人もいます。
それでもなお、「自分の目で確かめた」という安心感の方を人は選ぶのでしょう。
「リアルをそのままオンライン化しようとする問題」
「イベント化」もその派生です。
リアルの時は、イベント後に交流会を設けて横の関係を作る機会を提供していたので、オンラインイベントでそれをそのままやろうとしている、ということです。
リアルと同じように関係構築できないことが所与の条件ならば「交流会で関係を作る」という考えを根本から見直すのが適当でしょう。
対策:オンライン・プロジェクトを投げかけ、協働を通じた初期関係の構築を支援する
私が新型コロナを受けて立ち上げた、オンライン化の知見共有コミュニティは、立ち上げから完全オンラインで実施しており、運営チームもフルリモートで構築しました。
そんな経験なども踏まえた処方箋は以下です。
まず、前に述べたように、イベントの「一発勝負」で関係構築する先入観を捨て、少し時間を掛けて一緒に何かをやることで同等の関係構築をするよう、考え方を変えます。
その上で、何かしら何人かが関心を持ちそうなテーマを見つけ、取り組みを自発的にリードしてくれそうな人とそれについてきてくれそうな人々を、以下のように発掘します。
1)会ったことのない人がどれくらいいるか分からない状況では投稿したり提案したりしようと思えない人が多いので、最初に一声やアクションを引き出しやすい環境を作る(参画=単に場に属しているだけから一歩踏み出す)
2)知らない人が多数いる場所ではコミュニケーションしにくいので、オンライン1 on 1など、主催者と個別に話す場を作り、まずは主催者とメンバーの関係を構築する。
また、参加の動機や考え方など、相手が自発的に動くための「スイッチ」を探る(相互理解)
3)関心や背景など、何かしらの「共通点」を見出し、メンバー同士のつながりやコミュニケーションを促す(つなぐ)
4)自分の関心に合わせえ気軽に手を挙げられる「プロジェクト」や「タスク」を、まずは主催者が発信してみる(誘発)。
例えばアドベントカレンダーなど。
5)自分で言い出すのは面倒だけれど、誰かがやってくれるなら乗りたい、という人は案外いる。そのようなPull型ではなくソフトなPush型で「XXさん、これやってみませんか」と、やってくれそうな人に聞いてみる(促進)
6)仮でチームを組成して、まずは1回プロセスを回して、アウトプットを出すまで、言い出しっぺである主催者がリードする(協働)
・最初から、今後メンバーで自走できるようにする、主催者自身はあまりっ手を出さない旨を明言する
・自走でき、人が変わっても続けられる仕組みづくりのため、ログの記録、最初からテンプレート化を意識した進め方をする
・2回目以降は直接手を動かしたり、判断する度合いを下げ、できれば2リーダー候補に主体的に推進してもらう
・主催者は方針の判断、必要な支援、進行の後押しなど、結果が出るまで必要な補完を行う
7)その前段として、あれこれ考えない作業を一緒にやるのもいい。リアルでは、田植えやビラ折りなどが例で出たが、オンライン黙々かいのようなものでもいいかもしれない(共動)
8)目的達成まで続ける
・一撃必勝を狙わず、多様なものを気軽に投げ込む
・「コトを自ら起こし、自走できる人」が出るまで続ける
こうして、自走リーダーとそのフォロワーを見出し、協働する核となるものを定め、実施を通じて関係を構築することで、自発行動の「臨界点」を越えます。
レールを敷いておく
1つ2つ成功事例が出てくると「なるほど、そういうふうにすればいいのか。では、自分も何かやってみよう」と思う人が出てくるのではないでしょうか。
主催者としては、そう考えた人が自分で判断し、動きやすいよう、プロセスや基準を分かりやすくしておくことも大事です。
オンライン時代に求められる主催者力
リアル以上に「一緒に走れる人を見つけられる」よう、オンライン上で色々なメンバーの動きに目を配れる能力が大事そうです。
ただ、SNSは1人1人の普段の言動が垣間見えますし、共通点も見出しやすいので、その点ではリアルよりやりやすいとも言えます。
まだまだ途上、自分で見極める
まあ、こういったものもまだまだ開拓途上であり、本質を見据えつつも、色んな人が色んな取り組みをしながら、新しい方法が出てくると思います。
そういったものの中で良いもの、自分に合ったものを取り入れながら、試行錯誤してみてください。
◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki
conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
◆著者プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。
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