戦略・事業
オンラインセミナーの集客 マネタイズを阻む3つの要因
2020.10.17
*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki
conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
「オンラインはお金を取れない」という声をよく聞きます。
確かに、日々SNSで宣伝されるイベントを見ると大半が無料なのに、講師はそれなりに著名、明らかに原価がかかってます。
フォロワー万単位の面々がこぞって無料イベントを打ちまくる「オンライン修羅の国」では、リアル時代のアセットなどケツを拭く役にも立ちゃしなそうな気がしてきます。
とはいえ、何もしなければ、待つは確実な死。
リアル中心の企画屋であった私にとって、この状況は死活問題だったため、知見共有のコミュニティを立ち上げ、試行錯誤もしています。
更に、周りの“著名人ではない”実践家の成功事例も見えてきました。
本稿では、そうして見えてきた、オンラインのイベント収益化のヒントをまとめます。
全2回の前半はお金を取りにくい原因を掘り下げます。
次回後半では収益化の具体的方向性を類型化します。
現状:オンラインイベントの大半は1,000円以下
無料で魅力的な講座が溢れている中で、わざわざお金を払おうとは思わないでしょう。
私もオンライン化が始まった頃、90分のオンラインセミナーを何回かトライアルとして無料で実施し、アンケートで「このイベントにいくらなら払いますか」と聞いたところ、大半が1,000円かそれ以下、高くても3,000円でした。
これは、参加者としての自身の肌感と近い金額です。
常時4,000件のオンラインイベントが立っているイベント管理サービス「Peatix」の中の人に聞いたところでも、実は、有償と無償のイベントの比率は変わっていないものの、有償イベントの大半が1,000円以下と、リアルと比べ圧倒的に単価が安いそうです。
オンラインの有償化を阻む3つの要因
単に良質なコンテンツが無料で多く提供されているだけではなく、参加者や主催者の側の原因もあります。
それぞれについて掘り下げてみます。
オンラインセミナーの集客 マネタイズを阻む原因1)オンライン独自の価値がない
オンラインとリアルでは、商材の性質が感覚的に異なります。
例えるなら、リアルが「入場料を払う観劇」とすると、オンラインは「YouTube」。
時間と手間をかけて会場に足を運び、周りの参加者と雰囲気を共有しながら実物の講師の話を聞くのと、自分の部屋でPCやスマホの画面をながら見するのとでは、ありがたみが違うでしょう。
また、交流に価値を感じてイベントに参加する人もいます。
同じ価値を提供していると主催側が思っても、参加者は価値の劣化を感じているかもしれません。
オンラインの方が原価が安いと思っている人もいます。
原価と価値は本来は関係ないはずですが、原価が安ければ価格も安くあるべきと思われがちです。
なお、リアルのイベントは会場費無料・ワンオペで回せますが、オンラインイベントをワンオペで回すのは大変で、固定費の面ではオンラインの方が高くなります。
スタジオでプロに撮ってもらえば、リアルより原価が嵩みます。
また、同じ内容を伝えるには、オンラインの方がリアルの1.5〜2倍ほどの時間がかかるため、時間当たりの価値が低いと感じられるでしょう。
そういった主観的価値劣化を補ってあまりある、オンラインならではの付加価値があればいいのですが、単純にリアルの内容をオンラインに置き換えただけでは「移動時間がない」「質問しやすい」「気軽に受けられる」(いずれもアンケート回答より)程度で、お金を払うほどの価値とは認識されません。
人は価値を感じないものにお金を払わないため、有償化は難しいのです。
オンラインセミナーの集客 マネタイズを阻む原因2)知名度がある人にとっては、無償の方が合理的
SNSで目にするオンラインイベントの多くが無料なのには、競争上相応の理由があると考えられます。
無料イベントがありふれている中で有料にしても集客が覚束ない今の状況では、無料にしてリーチを広げておき、その後の商売につなげようと思うでしょう。
リアルなら、無料イベントでも100人以上集めるのは大変ですが、オンラインなら申し込みが200人、300人、という話はざらにあります。
リーチxコンバージョンで考えると、コンバージョン率を2倍にするのは大変ですが、オンラインならリーチが容易に数倍になり得る、ということです。
オンラインイベントは、移動がない分リアルより気軽に申し込みやすく、その上無料となれば、拡散されやすいのでしょう。
オンラインは、相対的に固定費は高いものの変動費は殆どないので、参加人数を増やすほど原価率は下がります。
リアルでは会場サイズで定員が決まり、変えることは難しいですが、オンラインなら、ツールのアップグレードやライブ配信でフレキシブルに定員を増やせます。
オンラインであれば何百人来ようと、オペレーターやアシスタントは一人二人で済みますが、リアルだと参加人数に比例してスタッフの頭数が必要で、人件費や手配の手間がかかります。
オンラインイベントの集客期間はなぜか短く、公開2週間後に実施というのもざらです。
リアルだと1ヶ月以上先が普通ですが、オンラインだとだいぶ先に感じます。
会場や人員手配の手間も少なく、コストやリスクも低く、直前でも集客できるので、実施回数を増やせます。
既にある程度影響力ある人なら、中途半端にお金を取るより、皆が一律在宅勤務で暇なこのタイミングに、自分の知名度をテコに無料イベントで多数の参加者を集めて認知を一気に高め、後で回収すればいいと考えるでしょう。
オンラインセミナーの集客 マネタイズを阻む原因3)主催者に覚悟がない
オンラインとリアルでは、構成や資料の作り方、話し方や盛り上げ方、運営のプロセスなど、ことごとく異なります。
比較的移行しやすいセミナーと比べ、ワークショップは更に作り方・回し方が異なります。
品質に妥協しない主催者の中には「これでは対価を請求するに値しない」という考えに陥る人もいます。
オンラインだと、ツールの不具合などで参加できなくなるという事が起こり得ます。
その場合の補償をどうするかなど、リアルと異なるリスク対策も必要です。
受付・回収の難しさもあります。
zoomなどの表示名と申込名が異なることはざらにあるので、名前を突合するのは現実的ではないですし、参加登録をしてもらって事後確認するのも手間がかかります。
リンクを知っている人だけ参加できるように割り切るのが、少人数・最小工数で運用する現実的な対応でしょう。
とはいえ、お金を払わずリンクを手に入れ、タダ見をしている人を検知する仕組みがないことを懸念する人もいます。
決済サービスやイベント管理サービスも、フレキシブルなお金の取り方に対応していません。
例えば、途中から有償パートを設けるなどです。ニコ生ではできそうですが、ちょっとビジネスイベントぽくない気もします。
そういった諸々のプロセスを新規に確立するには、ツールを組み合わせて仕組みを作り、運用を確かめるトライアルが必要でしょう。
それらは参加者の負荷や混乱を招きますし、リアルが可能な状況に戻れば無駄な投資になるかもしれません。
カニバリへの懸念もあるかもしれません。
リアルと同じコンテンツをオンラインでは安く提供してしまうと、リアルが実施可能な状況に戻った際に同じ金額を取りづらくなる、ということです。
これらは一概に間違った判断とは言えませんが、コントロールできない外部環境変化に自らを委ねることになります。
オンラインセミナー集客/マネタイズ:収益化の方向性
ここからは、事例に基づき、上記問題をある程度解決する方向性を示します。
・低額x超大人数
・高額x少人数・複数回のゼミ
※中単価x中人数・単発セミナーは難しい
・資料、権利、物品の事後販売や投げ銭
・後商材の宣伝
・参加費ではなく、スポンサー料を取る
オンラインセミナー集客/マネタイズ1)3,000円以下x100人以上
ある人は、3,000円+税のオンラインセミナーに、事前決済で170人集めていました。
イベント案内と資料作成に数時間、募集期間は1週間もない短さです。申込者全員に動画と資料を配布する旨あらかじめ明示しているので、当日行けずお金をドブに捨てるリスクがないので、参加者も安心して申し込めます。
行きたいけどその日は都合つかない人や、終了後に知った人でも申し込めます。ポイントは「お金を払ってでも聞きたい、実利が明確な内容か」です。
この時の内容は「リアルの売上がゼロになった人が、どのようにオンラインにシフトし、2ヶ月で売上700万を作ったか」というお話でした。
リアルでの売上減に直面し、オンラインへのシフトへのヒントが欲しい人にとっては、安い投資と思えるでしょう。
単価に合わせたオペレーションの割り切りもしていました。
主催者が講師もオペレーターも務めるワンオペで、申込みの有無は一々チェックしません。
可能性の低い不正視聴者確認の手間をかけるより、リンクを知っている人は正式に申し込んだ人だろう、と割り切ったということでしょう。
オンラインセミナー集客/マネタイズ2)数万円x20人以下・複数回のゼミ
もう1つは、高額なゼミです。
10万、20万の単価で10人前後が参加する、ビジネス英語や起業に関する2-3ヶ月のグループコーチングも成立していました。
受講者にとっては、単価が高くても、昇進、転職、独立などを実現できるなら、回収できる投資と考えるでしょう。
逆に、趣味的なものだと難しいかもしれません。高額な投資決定なので、事前の無料説明会など、導線設計も重要です。
少人数なので、オペレーションも簡素化できます。
少人数で継続するなら、顔と名前が一致するので受付は不要でしょう。運営も、主催者・講師・オペーレーターのワンオペか、講師のみ別立ての少人数の体制です。
講師への報酬は1人あたりいくらの変動費とします。ディスカッションやメンタリング中心なら、オンライン化による価値減少も抑えられます。
それ以上に、1回当たり単価が高いクラスに参加できないリスクが減るという、オンラインならではの付加価値の方が大きいでしょう。中単価x中人数・単発のセミナーは難しい
5,000円程度で数十人が参加するようなものは逆に難しい印象です。
実際、その価格帯のイベントはほとんど見たことがありません。オンラインでそれだけの価値を感じてもらうのはまだ難しそうですし、参加費を回収するオペレーションや、受けられなかった時に払い損にならないようにするバックアップ構築などの手間を考えると、なかなか見合わ
ないでしょう。
オンラインセミナー集客/マネタイズ3)資料、権利、商品の販売
講義資料、個別相談の権利などを、講座終了後に欲しいと思った人に買ってもらうなどです。
趣味のものなら、ワイン講座の終了時にワインを通販で売る、といったこともあるでしょう。とは言え、単価とコンバージョン率が高くなければ、あまり割のいいものとは言えないでしょう。
投げ銭はエンタメなど事業として成立する分野は限られそうです。
オンラインセミナー集客/マネタイズ4)商材のコンバージョンにつなげる
コンサル、研修、顧問など、品質が人に依存する高額の無形サービスは、「お金を払うに値するものか」を事前に自分の目で確かめられるなら、オプションとしての価値を持ちます。
参加者が講師の実力を見て、10人に1人の確率で1回100万円の講座を取れるとしたら、期待収益10万円、となります。
ポイントは、営業目的の説明会としないことです。
すでに購買意思のある層にとっては、詳細を知りたいというニーズが満たされるので問題ないですが、まだ講座テーマに関心があるだけの層にとっては、望まない売り込みを受けたと不快に思うでしょう。
自前でやると、思い入れが強いため、意図してなくても営業色が出過ぎることがあるため、外部のプロデューサーに参加者観点でディレクションしてもらうのも良いでしょう。
その上で、敢えて有料にするのも一案です。
無料にすると、顧客化する可能性が無い層が入り込み、本来のターゲットの意欲を削ぐ可能性があるためです。また、有料にするからにはコンテンツ自体として価値が見合わなければなりませんので、単なる営業セミナーにする訳にはいきません。自社コンテンツのレベルをあげるのにもいいと思います。
オンラインセミナー集客/マネタイズ5)参加者ではなく、企業から対価をもらう
企業側から対価をもらうのも一案でしょう。
実績があれば企画・実施を受託できますが、より気軽に打てるように、成果報酬という提案も可能です。
参加人数、引き合い数、受注金額など、成果指標を決めて、その実績に応じて報酬をもらうというものです。
オンラインセミナーは企業側にとっても気軽に始められるので、まずは先行投資なく実施してみて、反応を見たり、実績に応じて還元してもらう提案の方が、話としては早いでしょう。
ちなみに下記の講座はある企業と一緒に実施したインスタグラム講座ですが、400件の申し込みがありました。
リアルのセミナーなら、相当の運営負荷とそれなりの準備期間がかかったでしょうが、話の発端から1ヶ月もかからず実現しましたし、講師と私の2人で運営していました。
オンラインだとそんなこともやりやすくなります。
オンラインセミナー集客/マネタイズ<まとめ>
オンラインの有償化を阻む3つの要因
1)オンライン独自の価値がない
2)知名度がある人にとっては無償の方が合理的
→値下げ・無償化の競争に陥る
3)主催者に覚悟がない収益化の5つの方向性
1)低額x超大人数
2)高額x少人数・複数回のゼミ
3)資料、権利、商品の販売
4)商材のコンバージョンにつなげる
5)参加者ではなく、企業から対価をもらう
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。