テクノロジー
インターネット広告業界の「事実⇒課題⇒理想⇒解決策」②
2021.02.26
※こちらは連載記事2本目となっております。前の記事を読んでない方は、インターネット広告業界の片隅で「事実⇒課題⇒理想⇒解決策」を長々とポジショントークをしてみた①からどうぞ
インターネット広告代理店のビジネスモデル
例えば広告費を200万円使用する広告主がいた場合、160万円を各広告媒体に入金し、インターネット広告代理店は、その差額の40万円の手数料を報酬として頂きます。
ここで少し複雑なのは、インターネット広告代理店によって、同じ【広告費の20%】でも計算方法が違う場合もあるので、注意が必要です。
■代理店による計算方式の違い
1.広告主が支払う総額のうちの20%
2.各媒体に支払う総額の20%
各媒体に支払った金額が160万円とすると
「1.広告主が支払う総額のうちの20%」の場合
媒体支払:160万円
手数料:40万円
計:200万円
「2.各媒体に支払う金額の20%」の場合
媒体支払:160万円
手数料:32万円
計:192万円
となり「1.広告主が支払う総額のうちの20%」と「2.各媒体に支払う金額の20%」では8万円(媒体支払金額の5%)の差異が生まれます。
本記事では「1.広告主が支払う総額のうちの20%」として、話を進めます。
インターネット広告代理店の担当者のミッション
インターネット広告代理店の各担当者は、複数社のプランニングや運用代行を行っている場合が多いです。
担当者の目標手数料が【300万円】の場合。
クライアントA:広告費800万円|手数料160万円
クライアントB:広告費400万円|手数料80万円
クライアントC:広告費200万円|手数料40万円
クライアントD:広告費100万円|手数料20万円
の4社をプランニングと運用代行を行うことで、担当者の目標達成状態となります。
インターネット広告代理店の担当者の優先順位
一担当者の月次や週次、日次での業務時間などのリソースは限られているため
△優先順位高い
クライアントA:広告費800万円|手数料160万円
クライアントB:広告費400万円|手数料80万円
クライアントC:広告費200万円|手数料60万円
クライアントD:広告費100万円|手数料20万円
▽優先順位低い
となり、各社への業務時間という資源を配分されます。
△優先順位高い
クライアントA:広告費800万円|260分/日
クライアントB:広告費400万円|120分/日
クライアントC:広告費200万円|60分/日
クライアントD:広告費100万円|30分/日
▽優先順位低い
となります。
※実際にはノンプロフィットな業務や新規の営業活動を行っている可能性が高いので、イメージとしてください。
インターネット広告代理店の担当者の意思決定
例えばここで【クライアントE:広告費20万円|手数料4万円】の問合せ、依頼があった場合どうするのが良いでしょうか?
経済合理的に考えると、お断りすると思われます。
△優先順位高い
クライアントA:広告費800万円|手数料160万円
クライアントB:広告費400万円|手数料80万円
クライアントC:広告費200万円|手数料60万円
クライアントD:広告費100万円|手数料20万円
(・・お断りライン・・)
クライアントE:広告費20万円|手数料4万円
▽優先順位低い
もし受けたら会社からドヤされますし、実際に既存顧客の方が圧倒的に優先順位は高いので、もし無理して受けても、5分/日ほどのリソースしか割けません。
△優先順位高い
クライアントA:広告費800万円|260分/日
クライアントB:広告費400万円|120分/日
クライアントC:広告費200万円|60分/日
クライアントD:広告費100万円|30分/日
(・・お断りライン・・)
クライアントE:広告費20万円|5分/日
▽優先順位低い
初めて広告を活用する広告主の「広告費が少ないけど、プロに任せたい!」という気持ちは、わかりますが、現実的にいかにプロでも、リソースが配分できなければ、プランニングの質も、日々の調整、改善提案にも時間をかけられないので、かなりの確率で破綻し、最悪クレームになる可能性もあるでしょう。
先ほどとは逆に【クライアントF:広告費1,000万円|手数料200万円】の問合せ、依頼があった場合どうするのが良いでしょうか?
経済合理的に考えると、契約すると思われます。
△優先順位高い
クライアントF:広告費1,000万円|手数料200万円
クライアントA:広告費800万円|手数料160万円
クライアントB:広告費400万円|手数料80万円
クライアントC:広告費200万円|手数料60万円
クライアントD:広告費100万円|手数料20万円
▽優先順位低い
もし受ければ会社から評価は上がりますし、実際に手数料(報酬)の観点から言っても、既存顧客より優先順位は高いので、どうにかリソースを空けて契約する方向に進めるでしょう。
△優先順位高い
クライアントF:広告費1,000万円|320分/日
クライアントA:広告費800万円|260分/日
クライアントB:広告費400万円|120分/日
クライアントC:広告費200万円|60分/日
クライアントD:広告費100万円|30分/日
▽優先順位低い
但し今までと同様の働き方をしていれば、単純計算で320分/日のリソースを生み出す必要があります。個別ブラック化して、労働時間を増やすという方法もありますが、今の世の中、それは現実的ではありません。
よって各既存顧客を含めて、資源を再配分、再調整を行います。
△優先順位高い
クライアントF:広告費1,000万円|190分/日
クライアントA:広告費800万円|150分/日
クライアントB:広告費400万円|80分/日
クライアントC:広告費200万円|40分/日
クライアントD:広告費100万円|20分/日
▽優先順位低い
これで担当は、ハイ達成状態。所属組織の収益性は向上し、褒められること間違いなしです。
広告主の憂鬱
また目線を変えて、顧客目線ではどうでしょうか?
既存顧客の目線では、自社の担当プランナー、コンサルタントに新しく
クライアントF:広告費1,000万円
という契約が増えたことを認知するのは難しいので
ある日を境に自社の担当プランナー、コンサルタントの資源配分が3分の2に変わっていたとしても、
クライアントA:260分/日 → 150分/日
クライアントB:120分/日 → 80分/日
クライアントC:60分/日 → 40分/日
クライアントD:30分/日 → 20分/日
気づくことはないと思われます。
要するに広告代理店側は、売上や粗利を下げずに、自社の工数を削減することができるのです。
レスポンスが遅くなったり
打ち合わせ日時の調整が必要になったり
分析やレポートに不備や漏れがあったり
改善提案の質が落ちたり
するかもしれませんが、それでも不満が爆発し、契約解消だ!となることはないでしょう。
少なくとも合意したKPIがクリアできている間は・・・
インターネット広告代理店と広告主の関係
『インターネット広告業界の片隅で「事実⇒課題⇒理想⇒解決策」を盛大&長々とポジショントークをしてみた③』へ続く
◆執筆者 株式会社ワンチーム 谷田脩一郎
化学、食品、人材、機械、メディア、公益財団法人と様々な業界でセールス、マーケティング、事業開発を経験。インターネット広告業界の中小企業や、スタートアップ、NPOなど、フェーズに合った最適なサービスを受けられない構的課題を解決するため、株式会社ワンチームに参画。
デジタルマーケティングのコンサルティング、企業向けの研修、大学生向けの育成事業など行う。
◆著者プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。