戦略・事業
予算たった10万円/月。1ヶ月でデジタルマーケティングを始める方法
2021.01.13
これまで場当たり的に営業、マーケティング施策を実施してきたが、本格的にデジタルマーケティングを開始したい、コストの見直しをしたいとお困りの声が急増しています。
そこで、ノーコードや格安ツールを利用し、超コストカット!しかし、必要な施策は漏らさない、デジタルマーケティングを開始するための業務フローをまとめました。
お金をかけずにデジタルマーケティングを始めたいけど何から手を付ければいいのか?とお考えの方は必見です!
本記事ではデジタルマーケティングを始める段取りを
- 戦況分析
- デジタルマーケティングのシナリオ作り
- 運用に必要なツール選定、体制決め
の3つに分けて解説します。
デジタルマーケティングを始めるために策定すべき3つの要素
デジタルマーケティングを始める前に戦況分析を行います。
事業開始して数年が立っていればある程度自社製品、競合、顧客理解ができていると思います。
それらの情報を整理しマーケティング施策に活用します。
戦況分析では3C分析のフレームワークを活用して情報を整理します。
※補足:3C分析についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
マーケティングで圧倒的成果を出すには?(前編) ないがしろにされがちな3C理解が成果を引き上げる!
顧客の理解 (Customer の理解)
デジタルマーケティングはスマホ・PCを使ってWebサイト・SNS・アプリを見ている顧客と接触し商品購入まで態度変容してもらいます。
どんな施策を実施するかを決めるには、対象となる顧客が商品を購入するまでにどのようにデジタルメディアを活用しているのかを理解する必要があります。
顧客の理解を深める際は量的な理解(ターゲットの選定)と質的な理解(ペルソナ+カスタマージャーニーの作成)の二つが必要です。
この章ではターゲットの選定について解説します。
BtoC、BtoB、BtoBtoCの3つの事業に分けて解説するので、自社の事業が当てはまる箇所を選択ください。
BtoC事業の場合
すでに会社でターゲットとしている消費者がいると思いますが、ゼロベースで考えた場合の手順を解説します。
まずはじめは潜在顧客のボリュームが大きい顧客セグメントを見つけることから始めます。
この段階での顧客セグメントとは、消費者を年齢や性別などデモグラフィックの観点で顧客を分類するのではなく、商品が売れるまでのプロセスにおいてどこにボトルネックがあるのかを見つけることから始めます。
顧客を
- 競合・潜在ユーザー(認知なし)
- 競合・潜在ユーザー(認知あり)
- 認知・検討
- 期待値形成
- 利用 / 購買
- 評価
- リピート
の7つのセグメントに分類し、各セグメントの顧客数をアンケート調査で確かめます。
7つのセグメントの歩留りがわかれば、ビジネスインパクトの大きさと実行負荷の大きさで施策の優先順位を決めます。
これがマーケティングの大戦略になります。
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当社ではリサーチだけでなく、仮説構築から調査データの活用までを一気通貫でフォローしたリサーチサービスを提供しています。
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ビジネスインパクトの大きいセグメントを見つけたら、次に対象セグメントの顧客理解の解像度を上げ、マーケティングリソースを投入するターゲットを決めます。
すでにサービス提供をしている事業であれば、ある程度サービス・プロダクトを必要とする顧客象が見えていると思います。
既存の購買客を参考にしながらデモグラフィック・サイコグラフィックの観点で対象となる顧客数を割り出します。
ターゲットの顧客数が割り出せていればOKです。
※補足
マーケティングを本格的に始めたばかりの担当者は、ターゲットを所得の高い30代女性のような属性の定義はできていても、顧客数(市場)を把握していないケースがよくあります。
ターゲットの顧客数が把握できていなければ、ターゲットに十分にリーチするためにどの程度のマーケティング予算が必要なのか、また、想定通りに購入に至った場合どの程度のリターンがあるのか計算できません。
これでは会社にマーケティング予算を上申できません。マーケティングの第一歩は市場の選定から始めると良いでしょう。
BtoB事業の場合
BtoB事業の場合は購買経験のある企業数、ターゲットとなる企業数がそこまで多くないケースが多いので、BtoC事業のように7つのセグメントに分類する必要はありません。
BtoBの場合以下5つの項目でターゲットとなる会社の数と優先度を割り出します。
自社のソリューションを必要とする(特定の課題を抱えている)会社の
- 業界
- 商品ジャンル
- 部署、部門
- 会社規模(エンプラorSMB)
- 自社が提供するソリューションへのリテラシー
企業数を計算する際は帝国データバンクのような企業データベースを利用するのもいいでしょうし、もっと簡易に済ませるならばBaseconnectという会社情報を調べるサービスを使って概算してもいいでしょう。
例えば美容院チェーン店向けに業務用ドライヤーを販売している会社を想定しましょう。Baseconnectで美容院の業界で絞り込むと6126件の会社がヒットしました。これが概算できるターゲットの企業数です。
自社の理解 (Company の理解)
顧客の理解が進んだところで、今度は自社の理解を深めます。
この項目のゴールは顧客にどのようなメッセージを届けるかを決めることです。
メッセージの決め方は会社自体の存在価値を伝える場合とサービス・プロダクトの便益を伝える場合の2パターンがあります。
会社の存在価値を伝える場合
会社自体がブランドとして商品の競争力になっている場合、会社のミッション・ビジョン・バリューを強く打ち出し顧客に共感してもらう方法です。
例えばNIKE社の場合公式サイトで自社のミッションを以下のように定義しています。
このミッションを打ち出すことで、ただ機能としてのシューズを超えて、インスピレーション・イノベーションにチャレンジしようとする姿勢に共感する人のNIKE社に対する高感度が上がり、顧客が自社商品を購入してくれる確率が上がります。
サービス・プロダクトの便益を伝える場合
自分たちのサービス・プロダクトはターゲットとなる顧客にとってどのような便益を提供するのかを整理し、顧客に届けるメッセージにします。
便益は機能的便益(Functional benefit)と 情緒的便益(Emotional benefit)の2種類に分けて考えます。
機能的便益:
商品自体の機能で顧客が得られる便益。
軽い、簡単、安全、便利、精密、早いのような商品のスペックに当たるもの。
情緒的便益
商品が顧客に何らかしらの感情を与えるもの。
クール、安心、楽しい、ワクワクする、豪華、満足、のような感情。
訴求する便益が競合商品よりも顧客のニーズに刺されば、自社商品が購入される確率が上がります。
ちなみに、会社の存在価値とサービス・プロダクトの便益どちらをメッセージとして強調すべきかは自社の商品力によって使い分けます。
自社商品の機能性が他社商品より優れている場合は商品の便益を訴求することが効果的になります。
一方、機能・性能にに大きな違いがない場合は便益での訴求だけでは魅力を伝えきれないことが多いので、会社の存在価値を伝え顧客に共感してもらうことが有効に働きます。
競合他社の理解 (Competiter の理解)
デジタルマーケティングは対面の接客や営業ができないので、Webサイト上のメッセージのみで顧客に安心して購入してもらう必要があります。
メッセージを作り込む際に意識するのが競合商品との差(強み)です。
顧客が商品を選ぶ際に自社商品と比較する他社製品、または、全く別のソリューションを洗い出し、以下の項目を洗い出してどのように自社商品の強みを訴求するか検討します。
価格 |
商品はいくらで売られているか |
機能 |
どんな機能をが備わっているか。自社商品と比べてどのよう点が優れているか |
訴求内容 |
Webサイト、広告上でどのような強みを訴求しているか |
デジタルマーケティングを実施に向けたシナリオ作り
ここまでがデジタルマーケティングを実施する上での基礎準備です。
ここからは定めたターゲットに商品を購入してもらうための理想的な行動シナリオを描き、デジタルマーケティング施策を立案していきます。
Dual AISASに基づく人々の頭の中の行動シナリオ作成
本記事ではDual AISASというフレームワークを使って顧客に商品を知ってもらい購入するまでのシナリオを作る方法を解説します。
事例として木製アイテム専門店AmmyMade様でDual AISASモデルを作ります。
※補足:
Dual AISASについてはこちらの記事で解説しているのでよければ参考ください。
https://markecchi-lab.com/digital-marketing-failure/
商品の存在を知り興味を持った消費者の多くは「ググる」行為を伴います。
消費者は
- 商品の特徴
- 価格
- 他社商品との違い
- 口コミ
- どんな会社が販売しているのか
のような商品についての情報を調べることもあれば、
- どんなブランドがあるのか
- おすすめのブランドはどれか
- 商品の選び方はどうすればいいのか
といった商品カテゴリについての情報を調べることもあります。
これらの顧客が求める情報は検索キーワードという形で私たちは把握できます。
下図のように商品カテゴリ、商品についてどんなキーワードで検索するかをリストアップし、各キーワードでどんな情報が求められているかを整理します。
リストアップができたら各キーワードで検索した時に自社のWebサイトが検索結果に表示されるようにWebページを作ります。
各Webページは自分たちが届けたいメッセージだけでなく顧客が知りたいことがページ内に記載されているようにします。
最後のShareはサービス・プロダクトがどれだけ顧客に納得して感動してもらえるかによります。
商品自体の魅力がなければならないので、デジタルマーケティングのテクニックだけでは導けないと割り切りましょう。
「広めたい」のAISASでは商品よりも情報そのものに興味を持ってもらう必要があります。
そのためには「ターゲットの日常文脈で興味を持たれる情報」を意識してメッセージを作ります。
AmmyMadeであれば、商品のスペックについてメッセージを作るのではなく、赤ちゃんが生まれたばかりのお母さんが興味を持ちそうな赤ちゃんの可愛い記念写真、インスタ映えする赤ちゃんグッズなどになります。
ちなみに初期のデジタルマーケティングではメディアバイイングは行わずSNSやMAツールなど自分たちが直接発信できる媒体を使って情報を発信することをオススメします。
メディアバイイングは多くの予算を投じて認知獲得できたとしても、商品を買わない人の認知を同時に上げてしまい認知効率が悪いためです。
まずは、Webサイト経由で商品が購入される仕組みを整え、認知率をあげれば一定の購買が起こることがわかるようになってからメディアバイイング施策を実施します。
Shareは自分たちが発信した情報がどれだけターゲットの興味を引いたかのバロメーターです。
Acceptではどれだけ「メディア力のある」人、メディアに紹介したもらうかがゴールです。フォロワーの多いインフルエンサーに情報をシェアしてもらえればSpreadに繋がります。
これらの活動の総量が商品自体へのAttention(認知)となります。
最後にマーケターが頭を使わなければならないのは、商品を認知した購買経験のない潜在顧客に対して商品への興味を持足せるための仕掛けを作ることです。(=Activate)
この仕掛けを作れるかで、話題になっただけの商品になるのか、話題(認知)と共に売上が上がる商品になるのかが別れます。
ここまでの内容を一枚のシートにまとめるとこのようになります。
デジタルマーケティングに必要なツールを用意する
先ほど描いたDual AISASのモデルが構想通りに効果を出しているのかを計測するために必要なツールを準備します。
ここではなるべくコストをかけずにツールを揃えることを目標とします。
前提:必要最低限の計測ツールを設定
まず無料で利用できる最低限のツールを揃えます。
Webサイトのアクセスデータを計測するGoogle Analytics、SNS(Twitter、Facebook、Instagram)はそれぞれの媒体でインサイトというアクセスデータを計測できるので、まずはこれらの無料ツールを使って実施します。
無料ツールの内、Google AnalyticsだけがWebサイトへの設定が必要なので、まだ設定が済んでいない場合は設定を進めましょう。
Dual AISASモデルのKPIと必要な計測ツール
次に先ほど作成したシナリオを成功させるためのKPIを決めます。
計測に必要なツールも合わせて紹介します。
「買いたい」のAISASでは以下の項目が代表的なKPIです。
「広めたい」のAISASでは以下の項目が代表的なKPIです。
ほとんどのKPIはGoogleや各SNSが提供している無料ツールで計測可能ですが、一部の数字はベンダーが提供している有料ツールを使用する必要がありますので予め予算取りをしましょう。
デジタルマーケティング開始初期ではなるべくコストをかけずに使えるツールで施策を実行し効果検証することをオススメします。
例えばカイロスマーケティング株式会社が提供しているMAツールのKairos3はミニマム月額6000円から利用が開始できます。
会員情報(リード)が少ないない状態でデジタルマーケティングを開始するのであればKairos3のような安価なMAツールを利用し施策を実施することでツール費用を抑えられます。
また、ツール導入の際は導入目的を明確化して、目的にあったツールを探すようにしてください。
MAツールの例で言えば、ツールを利用する最大の目的は自社が保有する会員情報に対し商品の購入意向が高い顧客をスコアリングすることが目的になりますが、メール配信するだけでよければもっと安いツールで済みます。
何がしたいかによって選ばなければならないツールと費用が異なりますので注意してください。
予算策定
最後にデジタルマーケティング実施にあたりどの程度の予算が必要が試算します。
コストはツール費、制作費、広告費の3項目で整理します。
以下はサンプルとして最小限のコストで施策を実行する場合の費用を掲載します。
高機能なツールを使わず、まずは必要最低限の項目を計測しながら自分たちでデジタルマーケティングを実行すれば月額10万円かけずに実施可能です。
まとめ
デジタルマーケティングを始める初期段階では、ソリューションにお金を使うのではなく、必要最低限の計測ツールを利用しながら自分たちで手を動かすことで低予算でスタートさせることができます。
最後に低予算でデジタルマーケティングをスタートさせる手順をまとめておきます。
- マーケティングを実施ための3C分析を行う
- Dual AISASモデルを参考にデジタルマーケティングのシナリオを作る
(いいシナリオができればその後の仕事がシンプルになります) - KPI・KGIを明確にする
(KPIは上記で解説したものを参考にしてください)
上記プロセスの②③ができて初めてツールを導入するメリットが生まれますし、コンテンツを制作して集客したアクセスが購買に繋がります。
今回はこれからデジタルマーケティングを本格化させる担当者様向けに、施策を始める必要最低限の手順を解説しました。
何度も記事を見返してデジタルマーケティング施策の準備を進めてください。
こちらのリンクで最強リサーチテンプレート&ノウハウもダウンロードいただけますので、よければこちらもどうぞ。
◆顧客リサーチにはリソースが割けない!戦略は大丈夫?
戦略の意思決定を誤らないために、最低限重要なことだけを明確にできれば、
費用や時間がかからない簡単なリサーチでも十分です。
また、アンケートプロモーションでは、プロモーションと併せてリサーチをおこなうなど、リサーチとしてのコストをかけずに広告効果の補助として適切なリサーチ・マーケティングを行うことも可能です。
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執筆協力
小林 謙一
経歴・実績:大阪大学人間科学部卒。
国内自動車メーカー、グローバルスマートフォンメーカー
グローバルテーマパーク国内運営会社、グローバルテーマパーク本社Park & Resorts部門
グローバルカフェチェーン
などで一貫して、マーケティング、ブランディング業務を経験
現在は、家電メーカー、食品メーカー等のブランディング、マーケティングアドバイザーとして複数社の顧問を担当
株式会社ハートウォーミング・モーメント代表取締役社長
◆代表プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。