インタビュー
【UXデザインとデザイン経営】デザインの力でビジネスを引き上げるには
2020.04.08
新型コロナウイルスによる世界的な不況や、デジタル化など、変化が激しい今、既存の事例やデータのみでは意味をなさないことも多々あります。サービスや製品の企画に欠かせない存在となった、「デザイナー」。
デザイン経営など、経営や事業にデザインを取り入れるだけでなく、経営自体を「デザイン」するという考え方も浸透してきました。
いまや、デザイナーの仕事はイラストを描くことだけではありません。
デザイナーがビジネスにおいて成果を上げるために、大切なポイントを、UXデザイン業界のリーディングカンパニー 株式会社グッドパッチ でUXデザイナーを担っている西川様にきいてみました。
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■西村氏プロフィール
株式会社グッドパッチ UXデザイナー
西村 洋(にしむら ひろし)
神奈川大学工学部卒業
卒業後、メーカーでデザイン業務に従事
ベンチャー企業での勤務を経て、
株式会社グッドパッチ UXデザイナー(現職)
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UXデザイナーの仕事とは?
山中:プロダクトやサービスの開発の現場において、デザイナーはどのような役割があるのでしょうか?
西村:デザイナーの仕事は、「デザイン」をすることだけではありません。デザインプロジェクトを通じて、最近では「商品の情緒的価値にも責任をもつこと」が求められていると感じています。特にUXデザイナーだと如実ですね。
もちろん、WEBサイトやアプリの画面や機能、製品の概観を描いたり、HTML/CSS、Photoshop/Ilustrator、ワイヤーフレームを作ったりするのも仕事ですが、それはデザイナーの仕事の一部でしかありません。
ユーザー体験を深掘りするため、マーケッター、エンジニアなどの様々なバックグラウンドを持つ方々と、リサーチやインタビューをすることもあります。
山中:「商品の情緒的価値」とは具体的にどのようなものでしょうか。
西村:暖炉を思い浮かべてください。どのような価値があるでしょうか。まず、室温を上げる、煙だけを外に逃がす、これらは「機能的価値」です。次に、ほっこりする、懐かしさを感じる、これが「情緒的価値」です。
デザイナー不足の背景
山中:今や新規事業の開発にあたって、デザイナーは欠かせない存在となっています。また、職業としてのデザイナーは、世間の注目度も高く人気職種です。ところが、人手不足なのか、人材を見つけるのに苦労するという話をよく聞きます。なぜでしょうか。
西村:「デザイン」がサービスや製品の売上や利益に及ぼす影響は、多くの場合で事前予想や定量化が困難です。バナーやサイトを新しく作ったり、リニューアルしたものの、効果を計測してみると事前想定から大きく外れていたり、何が主要な成功要因だったのかの分析が難しい状況にも出くわします。そのため、効果やリターンが明確でないという理由で投資が見送られたり、資金は集まらないということがあります。
お金が集まらないために、デザイン業務の単価やデザイナーの単金が上がりにくくく、結果として、業界全体で人材が不足しているというのが率直な感想です。とりわけ日本ではその傾向が海外と比べ強いように感じられます。
近年、日本でも経産省主導で「デザイン経営」という言葉が広まりつつあり、デザインに投資する動きも見られます。しかし、まだまだ「デザイン」が顧客とのあらゆる接点に必要である理解している経営者は少なく、「デザイン」という発想そのものがないことさえあります。
山中:華やかなイメージとは違って、日本のデザイナーはまだまだ環境面で恵まれていないんですね。
デザインの成功例、失敗例を集合知として蓄積することができれば、「デザイン」の費用対効果がより明確になり、経営者の姿勢も積極的になって、投資や人材育成が進みそうですね。成功であっても失敗であっても事例や結果を共有しあうことが、今後とても重要になりそうですね。
デザイナーがビジネスにおいて意識する3つのポイント
山中:といっても、デザインの知識やスキルを、経営や事業推進の実務に役立てることはなかなか難しそうですね。
ビジネスで成果を出し続けているデザイナーに共通する特徴はどのようなことでしょうか。
デザインをビジネスに生かすポイント① 経営目線
西村:一つは、「経営目線」です。
「神は細部に宿る」という言葉がありますが、デザイナーは顧客が気づきにくい細部にわたるまで表現に気を使っています。ブランドマネージャーがあらかじめ決めてくれているのは、大きなストーリーと抽象的な価値までです。デザイナーの仕事は、顧客の目線や体験をイメージしながら、ブランドの持つイメージやサービスや製品のストーリーを具体的な表現に落とし込むことですが、一つ一つの表現が経営と密接につながっています。
例えば、WEBサイトデザインであれば、ボタンの色や形状、配置がデザイナーに委ねられることもあり、デザイン一つで売り上げが大きく変動することもあります。デザインとは、操作性や見栄えにとどまらず、顧客の行動を導くもの、すなわち経営の根幹であると感じていますし、ビジネスで成果を出すには経営目線が欠かせないと考えています。
山中:なるほど。
因みに、デザインを経営目線で行うのは勿論、
最近では、「デザイン経営」という考え方も広まってきましたね。
デザインの力をブランドの構築や、イノベーションの創出に活用する経営手法を導入することで、
これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことができるときいています。
- 経済産業省・特許庁は、2017年7月に有識者からなる「産業競争力とデザインを考える研究会」の議論の結果、2018年5月に報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめています。
デザインは、企業が⼤切にしている価値、それを実現しようとする意志を
表現する営みである。それは、個々の製品の外⾒を好感度の⾼いものにする
だけではない。顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を
徹底させ、それが⼀貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代
替できないと顧客が思うブランド価値が⽣まれる。さらに、デザインは、イ
ノベーションを実現する⼒になる。なぜか。デザインは、⼈々が気づかない
ニーズを掘り起こし、事業にしていく営みでもあるからだ。供給側の思い込
みを排除し、対象に影響を与えないように観察する。そうして気づいた潜在
的なニーズを、企業の価値と意志に照らし合わせる。誰のために何をしたい
のかという原点に⽴ち返ることで、既存の事業に縛られずに、事業化を構想
できる。
このようなデザインを活⽤した経営⼿法を「デザイン経営 」と呼び、それ
を推進することが研究会からの提⾔である。
デザインをビジネスに生かすポイント② 抽象度のコントロール
西村:二つ目に、「抽象度のコントロール」です。デザインは情緒的なものや非言語のものも取り扱うので、センスや感性に頼っているのではと誤解されがちです。しかし、実際のデザイナーの仕事は、まず顧客に与える価値を言語化することから取り掛かり、デザインの抽象度をコントロールしながら、具体的なアウトプットの形に仕上げていきます。
ロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった、与えられた情報を元に自分の考えをまとめて具体化するスキルはどの業種、職種でも必要だと思いますが、マーケッター、エンジニアと同様、あるいはそれ以上に求められています。
山中:すごくよくわかります。
デザインをビジネスに生かすポイント③ コミュニケーション力
三つ目に、高度なコミュニケーション力です。
いくらデザイナーが理想を追い求めても、現場ではクライアントの要望や、現実の予算や納期が優先されます。クライアントやチームメンバ―とのコミュニケーションに全力を注ぎ込み、期待値を調整してずれが生じないようにしていきます。デザイナーのアウトプットのほとんどが非言語のものだからこそ、なおさら言語化して伝えるスキルが必要であるとも言えます。デザインプロセスでコミュニケーションエラーがあっては、優れたものはを生み出せず、大きな失敗を招いてしまうことさえあるでしょう。
山中:デザイナーもほかの職種と同じような能力が求められてきてるんですね。
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◆著者プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。
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