【失敗学】30事例 新規事業・スタートアップが失敗を避けるために

失敗学

失敗分析➁:事業立ち上げフェーズ ダメージ中程度

◆ベクトル プロモーションの企画に目が奪われ、プロダクトをおろそかに

・業種分類
リサイクルショップ

・失敗の概要(定量)
リサイクルショップの広告のため、「買取戦隊ベクトル」というイメージキャラクターを作り、これに扮する社員を社長が直接任命し、仮面を与え、CMやTV出演、イベント出店などを行った。結果、数千万円の広告費を投入しても売り上げ伸びず、戦隊社員が不規則に店舗を抜けたため、残された社員の負担が急増し、職場に不満がたまって大批判となり、半年ほどでプロジェクトを終了した。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足
戦略 具体性・徹底度
価値・特徴不足

・失敗の要因(考察)
①ゴールが明確になっていなかった
この企画が企業理念に根付いた企画であるということが社内に十分浸透していなかった。さらにこの企画により、売り上げをアップさせたいのか、店舗への集客を増やしたいのか、サイトへのアクセスを増やしたいのか、企業のブランディングをしたいのか、サービスの認知度を上げたいのか・・・ゴールが明確になっていなかった。
②商品やサービスよりも、プロモーションの企画に目が奪われていた。
メディアに露出しても、商品やサービスの中身が磨かれていなければ、結局人は離れていってしまう。これは、商品やサービスの価値に十分着目しなかった、ということでもある。現在の同社は、プロダクト重視の文化づくりのための組織を整備したり、PDCA体制の構築を進めているという。

・引用データ・文献
https://netshop.impress.co.jp/node/5176

◆注文住宅工務店A社 求人広告にお金をかけたのに採用ゼロ

・業種分類
建設業

・失敗の概要(定量)
今まではハローワークや地域のフリーペーパー、たまにインターネットの求人媒体に広告を出す程度で、採用状況は良くなかった。このため、A社は自社のホームページに新たに求人ページを追加したことから、代理店の営業を受け、様々なネット媒体に求人広告を出した。効果が悪ければ別の媒体に出稿したり、期間延長したりで、総額は100万円を超えた。しかし結局、応募こそ増えたものの、採用はゼロに終わり、サービスとして成り立たなくなった

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足
価値・特徴不足
人材 マネジメント・ステークホルダー
外部環境変化(競合・税制度等)

・失敗の要因(考察)
求人広告にやみくもに大金をつぎ込んでも効果があるとは限らない。広告費は一時的な変動費であり、人件費は一定期間続く固定費であるため、給与額を上げることには慎重にならざるを得ないが、やはり給与額は仕事を選ぶ際の大きな基準である。給与額を相場より少し高くするなど、広告費を採用者の条件アップに使っていれば、良い人材を採用できた可能性がある。

・引用データ・文献
https://mag.branu.jp/archives/3043

失敗分析➁:事業立ち上げフェーズ 大ダメージ

◆セブン・ドリマーズ・ラボラトリーズ 「世の中にないモノ」に挑んだハイレベル技術集団の破綻

・業種分類
研究開発型の製造業

・失敗の概要(定量)

セブン・ドリマーズは2005年、世界初の「洗濯物全自動折り畳み機ランドロイドの開発に着手し、2016年にはパナソニックや大和ハウスとの合弁会社を設立。同年度中に先行予約販売を目指すとまで表明していたが、その後、シルクのような滑りやすい衣類が折り畳めないなどの欠陥が克服できず、再三にわたって販売を延期し、遂には製品化できないまま約22億5千万円の負債を抱えて2019年4月23日自己破産するに至った。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足
ニーズ検証不足
技術力不足

・失敗の要因(考察)

野野心溢れる大事業であり、破綻の原因も様々に語られているが、やはり下記が原因のように思われる。

①基本的には、ランドロイドがビジネスとして目指していた目標が不明確だったことである。

②自分たちへの過信からくるリスク対策の甘さだったということができよう。同社からは「商品を出しながら改良を加えていくやり方が認められる環境になかった」との発言もあるが、それはソフトについて言えることで、ハードウェア、特にコアな機構の部分は、出した後での改良が難しい。「研究」と「製品」のギャップをきちんと認識し、リスク対策も考慮したうえで、明確な事業目標を設定し、資金計画も立てるべきであった。2017年1月11日の同社代表阪根信一へのインタビューでは「技術開発は我々が一番自信のあるところで、」「絶対売れるに決まっています。」などとあり、この時点でもまだ、目標の明確化やリスク対策が十分でなかったと考えられる。

心溢れる大事業であり、破綻の原因も様々に語られているが、やはり①基本的には、ランドロイドがビジネスとして目指していた目標が不明確だったことであり、次いで②自分たちへの過信からくるリスク対策の甘さだったということができよう。

同社からは「商品を出しながら改良を加えていくやり方が認められる環境になかった」との発言もあるが、それはソフトについて言えることで、ハードウェア、特にコアな機構の部分は、出した後での改良が難しい。「研究」と「製品」のギャップをきちんと認識したうえで、明確な事業目標を設定し、技術開発面でのリスクも睨んだ資金計画を立てるべきであった。

・引用データ・文献

2017年1月11日の同社代表阪根信一氏へのインタビュー記事
https://www.watch.impress.co.jp/docs/senes/nishida/1182790.html(西田宗千佳)

2019年7月14日朝日新聞
https://www.watch.impress.co.jp/docs/senes/nishida/1182790.html
(西田宗千佳「なぜ『ランドロイド』は世に出られなかったのか」)

◆いきなりステーキ 【いきなりステーキ】アメリカで失敗

・業種分類
飲食

・失敗の概要(定量)
2019年2月14日、いきなりステーキはニューヨークで展開した11店舗中、7店舗を閉鎖した。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足
戦略 具体性・徹底度
ニーズ検証不足

・失敗の要因(考察)

【立ち食いがアメリカ人にマッチしなかった】
日本では
・立ち飲み屋
・立ち食いそば
・立ち食い寿司
など、「立ち食い」の文化が浸透していましたが、アメリカにはそれが定着してはなかった。

【ステーキに対する日米における位置づけの違い】
アメリカはステーキの本場で、外食では高単価なステーキが人気だ。そのため、価格の低いステーキは外食ではなく、自宅で消費されルケースが多いのです。そういった文化のアメリカで、リーズナブルな「いきなり!ステーキ」は浸透が難しかったのだろう。

・引用データ・文献
https://biz-journal.jp/2019/03/post_26893_3.html

失敗分析③:事業拡大フェーズ ダメージ 小程度

◆【NTTドコモ】らでぃっしゅぼーやの買収失敗にみる業務課題把握の重要性

・業種分類
サービス

・失敗の概要(定量)
2012年、通信事業の不振に直面し、事業多角化を迫られたNTTドコモは、「中期ビジョン2015」を掲げ、M&A戦略を打ち出す。その目玉が、有機農産物の個配事業を手掛ける、らでぃっしゅぼーやの完全子会社化(買収額69億円)である。しかし子会社後、ドコモ契約者の反応は限定的で、売上高は買収前と変わらず200億円前後を推移した。2013年度の最終損益は200億円超の赤字を計上、買収前に39.4%あったらでぃっしゅぼーやの自己資本比率は、2017年2月時点で5.4%まで落ち込む。結局、ドコモは2018年保有全株式を競合であるオイシックスに10億円で売却、さらにオイシックスに3%出資し事業経営から大きく撤退した。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足        

ニーズ検証不足
価値・特徴不足
ブランディング・PR戦略ミス
タイミング

・失敗の要因(考察)
そもそも国内の有機農産品市場は農水省の推計値で1850億円(2017年度 )であり、欧米に比べ約1/10以下の市場規模である。この状況では、顧客の掘り起こしや囲い込みよりも、顧客ニーズの深堀りや経営基盤強化といった腰を据えた戦略が必要だ。「食のSPA」を掲げるらでぃっしゅぼーや。2012年、同社の緒方大助社長(当時)は、日経新聞のインタビューに「ドコモの力を借りれば生産者をITでつなぐことができるだろう。」と、バリューチェンの効率化や顧客接点の多角化を期待していた。しかし、同社の2014年新卒採用説明会資料によれば、ドコモと共同した取り組みは、実際にはドコモショップや音声対話アプリ、タブレット端末の提供など、限定的だったと見受けられる。買収側が被買収側の真の課題を見誤り、短期的視点で莫大な販売関連費用を投下した結果、大幅な減資、さらには出資側の事業撤退に至ったといえよう。

◆【NTTドコモ】ABCクッキングスタジオの買収失敗にみる人材マネージメント・統治システムの重要性

・業種分類
サービス

・失敗の概要(定量)
NTTドコモのM&Aの失敗例として、らでぃっしゅぼーやとともに語られるのが、2013年のABCクッキングスタジオの買収である。
当初から200億円という巨額の買収額には市場から疑問の声があったが、結果的に5年後の2018年、創業家による株買戻し(MBO)という形でドコモは経営から撤退した。

・失敗の要因(分類)
戦略 具体性・徹底度
人材 マネジメント・ステークホルダー

・失敗の要因(考察)

この撤退理由について、人材マネージメントに着目して考察したい。ドコモのような大企業が自社の1/100以下の企業を買収する場合、買収先に送られる役員の、①将来の役員・取締役候補、②定年をまじかに控えた50歳前後の、役員もしくは理事クラスのいずれかの場合が多いと言われる。その多くは数年で交代し、次の経営陣が送り込まれるサイクルを繰り返す。また、人事部の影響力が強い企業では、本人が意欲的でも、自社から活躍可能な経営人材を集め「ボードメンバー」を組織できるほどの裁量もない。やむなく、子飼いの部下に声をかけるが、買収先の人材ニーズとはかならずしも一致しないことも多い。一方で、ABCクッキングスタジオはビジネスモデルとブランドは確立していたが、資本金1,000万円のオーナー企業であった。この状況で、ドコモの51%という出資比率も、オーナー企業の買収としては中途半端であったことは否めない。企業統治の観点から見ても、生え抜き社員と、ドコモからの出向の融和が困難であったことが推察される。

 

◆【ユニクロ】イギリス進出に失敗

・業種分類
衣料小売り

・失敗の概要(定量)
2001年、ユニクロはイギリス(ロンドン)に海外初進出をしました。21店舗まで拡大したが、最終的には巨額の赤字を計上し、撤退した。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足       
戦略 具体性・徹底度
人材 マネジメント・ステークホルダー

・失敗の要因(考察)
【企業理念の浸透が困難だった】

ユニクロは、「現地法人は現地の人が経営すべき」との考えから、イギリスの老舗デパートで働いた経験のある人材を社長に抜擢しました。その結果、イギリスのカルチャーの反映もあって、保守的な経営陣や組織になってしまいました。経営者から現場スタッフまで、それぞれに階級・階層が形成され、自由闊達なコミュニケーションが取りづらい環境になってしまったようです。

・引用データ・文献

https://www.digima-japan.com/knowhow/world/4740.php

【コカ・コーラ】『ニュー・コーク』騒動 とは?

・業種分類
飲料

・失敗の概要(定量)
1985年、コカ・コーラカンパニーは、世界中で親しまれてきた「コカ・コーラ」の味を変更すると発表しました。この発表に世界中のユーザーは反発し、従来製品の買い占めが起きました。そのうえ、数千件のクレームが会社に集まりました。これをうけ、コカ・コーラカンパニーは、従来製品を再び導入することを決定しました。

・失敗の要因(分類)
戦略 筋違い・考慮不足
ブランディング・PR戦略ミス

・失敗の要因(考察)

顧客が従来のコーラブランドに強い愛着を感じていることを把握しきれていませんでした。損失回避(新製品が既存の製品よりおいしかったとしても、慣れ親しんだ味を失いたくない)の思いを持つ消費者のインサイトを察知できなっかたのが原因です。

・引用データ・文献
https://www.cocacola.co.jp/stories/newcoke
https://marketer-thinking.com/column/colawars.html

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