インタビュー
【中編:マーケティングの本質とは?】リサーチ業界No.1企業の代表に直撃
2020.06.27
購買履歴やアクセスログなど、行動データの量が増え、ネットリサーチや定性インタビュー調査などの必要性に変化が起きてきています。
そこで、今回は、リサーチ業界でも最大手で、売り上げも最上位、1960年の創業から国内のリサーチを率いてきた株式会社インテージ 代表取締役社長の檜垣 歩さまに、
マーケティングリサーチ業界が抱える課題と、デジタル化の進展がリサーチ業界に与える影響や将来像についてお話を伺いました。
リサーチだけではなく、マーケティング戦略における顧客理解の今とこれからについても深く考えられる内容となっているため、その観点でも必読です。
■檜垣氏プロフィール
株式会社インテージ 代表取締役社長
檜垣 歩(ひがき あゆみ)
東京大学理学部卒業
カゴメ株式会社にて主に飲料の商品開発、マーケティングに従事
代表作は「カゴメキャロット100」
1995年株式会社インテージ(当時:社会調査研究所)入社
主に、SCI再構築、i-SSP開発、R&Dなどに従事
執行役員 マーケティングイノベーション本部長を経て、
2016年取締役、2019年代表取締役に就任(現職)
株式会社インテージホールディングス取締役を兼任(現職)
1.一流のマーケターは一流の生活者であれ
マーケティングの「ハレ」と「ケ」
檜垣:一流のマーケターの条件は、情報を貯金していること、一流の生活者、一流のユーザーであることです。プロフェッショナルとしての目線と生活者としての目線の交錯があって初めて課題の発見であったりします。
山中:少し前にnoteで「マーケターよ、たくさん稼ごう。そして、めいっぱい遊ぼう!」という記事を見つけたのですが、Facebookに投稿したら、すごくたくさんのいいね!がついて、とても共感されました。
元記事:https://note.com/ikedanoriyuki/n/ncb3f513ea566
檜垣:「ハレ」ものに敏感になるのはとても大事なことだよね。流行や人だかりを発見したら、まず行ってみることがとても大事だと思います。
マーケティングでは「ハレ」も大事ですが、一方で「ケ」の変化に気づくことも大切です。料理のレシピをクックパッドで調べたり、キャッシュレスで買い物をしたりと、生活者の行動も変わってきています。
日常生活においても、ちょっとしたチャレンジをし続けて、様々なインサイトを見抜く努力を続けないと、一流のリサーチャーにはなるのは難しいでしょう。
2.マーケティングの本質は他者理解
山中:ところで多くの企業で、生活者の目線を欠いた意思決定が、非常に多く見受けられるのはなぜなのでしょうか。
なぜユーザーの目線を欠いた意思決定が多いのか?
檜垣:企業の意思決定に生活者の目線を含めることは、できるようで出来ないものです。生活は仕事以上にルーチンの塊で、自分が慣れたやり方で、掃除、料理、買い物をし、余暇を過ごすもの。自分自身のライフスタイルから踏み出して、ターゲットとしているユーザーの「ケ」を理解するのはかなり難しいことかもしれません。ある名物リサーチャーは紙おむつを自分で履いて履き心地を確かめていましたし、日用品メーカーの取締役は株主総会に紙パンツで臨むそうです。
山中:ええー!さすが、凄くこだわっているんですね。実際にやってみてみないと、分からないことがあるのですね。
檜垣:リサーチは、理解しえない他者であるユーザーを理解するためにあるものです。自分の体験から立てた仮説は、たいてい決めつけでしょう。たとえ、自分と同じ属性の集団をターゲットとしていても、多数派とは考え方とはずれていることが多いのではないでしょうか。ターゲットユーザーと自分の考え方のずれに気づかず、失敗してしまうマーケターやマーケティング事例は非常に多いと感じます
山中:本当にそうですね。私はこの仕事を始めてから、「他人と自分は違っていてよい、だから理解しようと努める。」という考え方になりました。すると仕事がとてもやりやすくなりましたね。
檜垣:リサーチは、理解しえない他者であるユーザーを理解するためにあるものです。自分の体験から立てた仮説は、たいてい決めつけでしょう。たとえ、自分と同じ属性の集団をターゲットとしていても、多数派とは考え方とはずれていることが多いのではないでしょうか。ターゲットユーザーと自分の考え方のずれに気づかず、失敗してしまうマーケターやマーケティング事例は非常に多いと感じます。
山中:本当にそうですね。私はこの仕事を始めてから、「他人と自分は違っていてよい、だから理解しようと努める。」という考え方になりました。すると仕事がとてもやりやすくなりましたね。
檜垣:とても良い考え方だと思います。マーケティングの本質は他者理解だと気がつくと、仕事全般に良い影響を与えますね。仮に誰かと意見が衝突しても、感情的にならずに会話を成立させたり、折り合いがつけられたりするようになって、人間関係も良好になるでしょう。他者を理解しようとする姿勢と複眼的視点は、山中さんが一流のリサーチャーであることを示していると思います。
3.デジタル化の進展で定性情報の存在感が増した
山中:デジタルマーケティングがあらゆる業界で普及しつつありますが、一方でリサーチ業界が大切にしてきたような、定性情報も踏まえて、「人」をちゃんと理解したいという考え方は広まっているのでしょうか。
データの海に溺れて、意思決定を誤っていませんか?
檜垣:リサーチの業界では、デジタル化の進展によって定性情報の存在感が増したといわています。日本に限らずグローバルで一致する見解です。
山中:定性情報の重要性が増した背景には、事業会社のマーケティングやマーケターにどのような課題や悩みがあるのでしょうか。
檜垣:定性情報を集めて事業にどう活かすかは、昔ながらの課題ではあります。マーケティングは価値創造のプロセス、いわばプレゼントを差し出すこと。プレゼントを差し出すのに、相手がどんな人でどんなことを考えているのかは必ず考えますよね。マーケティングの課題が収斂してきていて、「人」の観点が重みを増しているからでしょう。
山中:はい。当社の周りも、ビッグデータを集めている会社が多いので、定性情報、まして人に注目する必要なんていらないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
けれども、膨大な量のアクセスデータや行動データを集めてみたものの、その処理に追われ、思うような結果が出せていない事業会社が多い印象です。そうした経験から、大量のデータだけから自社のマーケティング戦略の課題を導き出せるかは疑問に感じています。潜在ユーザーや離脱ユーザーのデータは社内にはありませんし、データが現場の状況や因果関係を正確にはとらえきれているとは限りません。データだけでは、マーケティングの戦略を立てるにはインプット情報として不完全ですし、課題の設定や意思決定をサポートできないのではないでしょうか。
データだけを見て議論することの危うさ
檜垣:定性情報を見ていないと、データが何を示しているのかわからず、意思決定を誤るリスクがでてきます。一つ事例をあげますと、ある航空会社のお客様アンケートで、不満点としてラウンジが混雑していることが多く挙げられていました。ところが、現場に行ってみるとラウンジは空いていて、ラウンジの受付が混雑していました。真の課題は、受付オペレーションの改善だったのです。
山中:何が不満だったかくみ取れないアンケートを設計してしまったから、データを誤って解釈してしまったのですね。
檜垣:もし、会議室で、データだけを見て議論していたら、スペースを拡張しようというような、投資額も全然違う施策になっていたかもしれません。こういうことはたくさんあります。データだけを見てわかることって少ないです。
檜垣:いやいや、その分析は何のためにするんですか。
山中:趣味で楽しい活動ならいいんですけどね。笑
檜垣:データ分析から新しいファクトを見出すためだったら、データを全数取り扱う必要はないかもしれません。マーケットオーバービューの名の下に、何か宝のようなデータがあるだろうと思って、データの海に溺れてしまっているのかもしれません。ビッグデータがあるからといって、やみくもに分析してはならないでしょう。
◆戦略・リサーチにリソースが割けない!?大丈夫です!
戦略の意思決定を誤らないために、最低限重要なことだけを明確にできれば、
費用や時間がかからない簡単なリサーチでも十分です。
また、アンケートプロモーションでは、プロモーションと併せてリサーチをおこなうなど、リサーチとしてのコストをかけずに広告効果の補助として適切なリサーチ・マーケティングを行うことも可能です。
私達、株式会社まーけっちは、事業の成功に根差した、リサーチ・マーケティング支援を追及しています。
手法や戦略にご興味があるという方はお気軽にご相談下さい。
・資料の無料DLはこちら
◆代表プロフィール 株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。
◎副業・フリーランス登録のご希望・相談もお待ちしています!
※ラフなメッセージ歓迎です!
◎FACEBOOK ◎Twitter