戦略・事業
【失敗学】組織に向いていない事業を見極める秘訣とは?/ VOYAGE GROUP 宇佐美氏 インタビュー(後編)
2019.11.17
事業を成功させるコツは、どこにあるのか?
数々の事業を成功に導いてきた、株式会社VOYAGE GROUP代表取締役社長兼CEO、CARTA HOLDINGSの代表取締役会長の宇佐美進典氏に、新規事業を成功させるコツについて、お話を伺いました。
中編では、「失敗とは?」「組織を成功に導く「行動原理」などについてお聞きしました。
後編では、選んではいけない事業領域、市場を見極める情報の取り方 など、今すぐに活かせることについて教えていただけました。
早稲田大学卒業後、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て、1999年にアクシブドットコム(現・VOYAGE GROUP)を創業。2005年〜2010年までサイバーエージェントの取締役も兼務し、メディア部門副統括・技術部門担当役員としてアメーバの成長等に携わり幅広く経営の実務を経験する。2010年からはVOYAGE GROUPの成長にフルコミットし、2014年東証マザーズ上場、2015年東証一部上場。直近ではCCIとの経営統合により発足したCARTA HOLDINGSの代表取締役会長に就任。
やっていはいけない事業とは?
山中 : 話が戻りますが、自分たちに向かないことは、つまり、持っている思いの方向性や技術力が
向いていなかったよねみたいのがありえるんですか?
宇佐美 : それはありえますよね。
山中 : どのような経験をされたことがありますか?
宇佐美 : 私たちはスマホゲームの前に、2010年~2011年くらいの頃、ガラケーのソーシャルゲームに参入したことがあります。
しかし、それはうまくいかなかった。原因の一つとして、そもそも参入した時期が少し遅かったということがあります。
ソーシャルゲームが伸びていく時代はゴールドラッシュに似ていて、早くお金が出そうなところに行き、ほかより早く掘るというのが大事でした。お金だけではなく、知見を貯めていくためにもすごく大事だったんです。
ところが、私たちは”わかりやすく伸びていくところ” に対して、どうしようと右往左往して参入に遅れてしまいました。それは、組織のメンタリティとして新しい領域にすぐ飛び込むような会社のカルチャーがまだなかったからです。もう少し様子を見て 先行して入っていく人たちは
いろいろな知見を貯めて、市場が伸びていく状況の中で向いてる人たちが集まっていたんですね。
私たちはじっくりとコツコツと作っていくのは得意ですが、早くても少しくらい質が悪くてもまずやってみて パクリでもいいからどんどんやる、みたいなそういうのは得意じゃなかったんですよね。
山中 : 組織や人を事業に合わせるのは、難しいということですね。
宇佐美 : そうですね。組織や人を事業に合わせるのは、ある程度の規模になってからの新規事業の話ですね。 0から1をつくるフェーズであれば、経営者のタイプに合った経験を持っている人を採用すべきです。
山中 : BtoCでもBtoBでも、考え方は変わらないと思われますか?
宇佐美 : BtoBのほうがヒアリングをしやすいから、マーケットニーズは確認しやすいですよね。やりやすいです。
目の前のクライアントを満足させれば使ってくれるから、反応がわからないものを市場に出す必要がありません。
山中 : BtoCはどうなのでしょうか?
宇佐美 : センスが重要だと思いますよ。BtoCは不特定多数のユーザーを想像しながら、そこに対してサービスを提供していきますよね。
山中 : まだ、市場に出てまもないものや、ニーズがわからないものを、感覚鋭く当てていけるかみたいなことですね。センスですか。
宇佐美 : BtoBの方がどちらかというと努力と根性でいきやすいですよね。
センスを育てるたった1つの方法
山中 : 確かにそうですね。BtoCだとすごく投資したけど全然売上にならなかったとかもあることはありますしね。
こういう人はセンスあるな、と思うことはありますか? それとも熱量の積み重ねで、ノウハウや実績を積み重ねてBtoCのものを当てる確率が上がるものなのでしょうか。
宇佐美 : 例えば、ファッションのセンスがいい人を思い浮かべてください。ファッション雑誌をたくさん読んでいませんか? つまり、ファッションに関してインプットが多く、さらには好きでしょう?
何がかっこよくて、何がかっこ悪いかわかっていて、しかもなぜかっこいいかってことを
自分でも説明できるようになってくる。
山中 : なるほど、言語化までできるようになると。
宇佐美 : だからBtoCのサービスでセンスがいい人というのはたぶんいろいろな良いサービスを使っていて、最近あのサービスが出てきてすごくよかった、 という形で言語化することがすごく得意な人ですよね。全般的にBtoCサービスのインプット多い人です。
山中 : アプリでいえば、人よりもたくさんやってるんですよね。
宇佐美 : 経験がないとセンスが磨かれないし、逆にいうとセンスは磨けるしつくれるんです。
山中 : 最後に一つ質問させてください。伸びていく市場を見極めるために、良い情報ソースや人といったコツはありますか?
伸びていく市場を見極める「現場の情報・ヒアリング」
宇佐美 : あんまりないですね。FacebookやTwitterが情報ソースです。あとは会って話をすることですね。
山中 : 現場の情報をってところですね。そこってけっこう意識されてますか? いろんな業界の人に会うようにしているとか。
宇佐美 : そこまで意識していません。
山中 : そうなんですね。
宇佐美 : ニュースを見る時や、社内の中で話をする時、他の会社の人と話をする時に、いかに自分の中に仮説を持ってるかが大事ですね。
山中 : これが伸びるんじゃないかとか。
宇佐美 : 仮説を持っていると、質問できるようになりますよね。
また、ニュース見てもこの現象が起きている背景には実はこういうことがあるんじゃないか、と自分の中に仮説を積み上げていくことができます。
山中 : 実際現場の人に当ててみますか?
宇佐美 : はい。当ててみて「あ、これってちゃんと伸びてるんだな」とか。
山中 : 実際仮説を当てるのにWebの一次情報では難しいでしょうか? 他社の決算書でもできると思いますか?
宇佐美 : できるとは思いますけど、難しいでしょうね。やっぱり本当の生の情報って言葉になっていないことが多いですからね。 だいたいそういうの隠しますし。
山中 : 仮説を中の人に聞くのが早いですしね。
大変参考になりました。ありがとうございました!
早稲田大学卒業後、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て、1999年にアクシブドットコム(現・VOYAGE GROUP)を創業。2005年〜2010年までサイバーエージェントの取締役も兼務し、メディア部門副統括・技術部門担当役員としてアメーバの成長等に携わり幅広く経営の実務を経験する。2010年からはVOYAGE GROUPの成長にフルコミットし、2014年東証マザーズ上場、2015年東証一部上場。直近ではCCIとの経営統合により発足したCARTA HOLDINGSの代表取締役会長に就任。
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