戦略・事業
人事やブランディングのKPI:難しさを打破するには
2024.11.22
KPIの作り方と難しいケースの対処法
KPI(重要業績評価指標)は、ビジネスの成功に向けた進捗を測るための重要なツールです。しかし、適切なKPIを設定するのは容易ではなく、特に定量化が難しい領域ではその難易度が増します。本記事では、KPI設定の基本から、難しいケースや具体例までを解説します。
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KPIとは?
KPIは、目標を達成するために必要な進捗を測定する指標を指します。目標が「売上100万円増加」であれば、その達成度を測るために「月次売上」「新規顧客獲得数」などがKPIとして設定されます。
- KPI設定のポイント:
- 具体的であること – 定量化できる数値や成果にする。
- 達成可能性 – 無理のない現実的な目標設定。
- 時間軸の設定 – 適切な期間で評価可能にする。
KPI設定が難しい部署とは?
一部の部署や業務では、成果を数値で表すのが難しい場合があります。以下のようなケースが典型的です。
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マーケティング部門のブランディング
ブランド認知度やイメージは数値化が難しいため、適切なKPIを設定するのが難題。 -
総務・人事部門
社内報やイントラネットの活用促進など、直接的な収益に結びつきにくい業務。
KPIは一つに絞るべき理由
KPIを複数設定すると、指標が分散し焦点がぼやけます。
デメリット
- 優先順位が不明確になる。
- メンバーの負担が増加し、目標達成が困難に。
解決策
- 最重要項目を特定し、KPIを1つに絞る。
- サブ目標はKPIではなく、**補助指標(KGI: 重要目標達成指標)**として扱う。
難しいKPI例: ブランディング
ブランドイメージや認知度は数値化が困難であり、曖昧な目標設定になりがちです。
例:「ブランドの魅力度を高める」では具体性に欠けます。
ブランディングのKPI例
以下は具体的なブランディングKPIの例です。
- ウェブサイトの訪問者数:ブランド認知度向上の指標。
- SNSエンゲージメント率:投稿への「いいね」「シェア」「コメント」などの反応数。
- ブランドアンケートスコア:顧客調査に基づくスコア。
1. ブランド価値向上を測る本質的なKPI
1-1. ブランド認知度の向上
- 指標: ターゲット市場でのブランド認知度の変化。
- 計測方法: 定期的な市場調査やアンケートを実施し、認知度の増減を測定。
- 具体例:
- ターゲット層におけるブランド認知率を12か月で50%から60%に向上。
- ブランドのロゴやスローガンを知っていると回答した人の割合を調査。
1-2. 顧客ロイヤルティの向上
- 指標: ブランドロイヤルティ指数(Brand Loyalty Index)や、NPS(ネットプロモータースコア: 推奨意向)。
- 計測方法: 顧客アンケートや、リピート購入率を分析。
- 具体例:
- NPSスコアを現在の25から30以上に向上させる。
- リピーター顧客の売上比率を3%増加させる(例: 全売上の40%から43%へ)。
1-3. ブランドイメージの向上
- 指標: ブランド属性(例: 高級感、信頼性)の評価スコア。
- 計測方法: 調査会社を活用したターゲット層への定期アンケート。
- 具体例:
- 「信頼性の高いブランド」と評価された割合を20%から30%へ引き上げる。
- ブランドスローガンの認知度を1年で25%アップさせる。
2. 事業への直接的な貢献を測る本質的なKPI
2-1. 売上増加への貢献度
- 指標: ブランディング施策後の新規顧客獲得率や、ブランドの売上全体に占める割合。
- 計測方法: 売上データの分析、広告・マーケティング経由の新規顧客数をトラッキング。
- 具体例:
- 新規顧客からの売上を前年比20%増加。
- ブランド関連商品の売上比率を全体の60%に増加。
2-2. ブランドプレミアムの向上
- 指標: ブランド商品の価格プレミアム(同業他社よりも高価格で販売できる状態)。
- 計測方法: 競合製品との価格比較、ブランドプレミアムの調査。
- 具体例:
- ブランド商品の平均販売価格を競合より10%以上高く設定し、販売数も前年同期比10%増。
- ブランドロゴ入り限定商品の売上を前年比30%アップさせる。
2-3. 顧客獲得コスト(CAC)の削減
- 指標: 広告・販促費に対する新規顧客獲得数(顧客獲得コスト)。
- 計測方法: 広告経由の新規顧客数と投資額の比較。
- 具体例:
- ブランドキャンペーンを実施後、顧客獲得コストを15%削減。
3. ブランドのオンライン評価を測るKPI
3-1. オンラインレビューの評価
- 指標: ブランド製品やサービスに対するオンラインレビューの平均評価スコア(例: 星の数や満足度スコア)。
- 計測方法: ECサイトやレビューサイトのスコア分析。
- 具体例:
- AmazonやGoogleレビューでの平均評価を4.0から4.5以上に向上させる。
3-2. ソーシャルメディアの影響力
- 指標: ブランドのSNSフォロワー数、エンゲージメント率、バズ投稿の発生件数。
- 計測方法: SNS解析ツールを活用してデータ収集。
- 具体例:
- 月間SNSエンゲージメント率(いいね、コメント、シェアの合計)を5%向上。
- ブランドキャンペーン関連のハッシュタグ投稿数を10,000件に到達させる。
4. 社内効果を測る本質的なKPI
4-1. 社員のブランド理解度
- 指標: 社員がブランド価値やビジョンを理解している割合。
- 計測方法: 社員アンケートや社内セミナー参加率の測定。
- 具体例:
- 社員の「ブランドビジョンを理解している」と回答した割合を90%以上にする。
- ブランド啓発研修への参加率を100%に達成。
4-2. 採用活動への影響
- 指標: ブランドイメージの向上による応募者数や質の改善。
- 計測方法: 採用プラットフォーム経由の応募数や候補者のブランド認識評価。
- 具体例:
- 採用活動で「ブランドの印象が良い」と回答した応募者割合を75%以上にする。
- ブランドイメージを理由に応募した人材の割合を前年比10%増加。
本質的なKPI設定の注意点
- ROIを明確に: ブランディング施策で得た成果を具体的な事業価値に落とし込む。
- 長期的視点を持つ: ブランディングの効果は短期で完結しないため、定期的な進捗確認を行う。
- 外部調査を活用: 自社内の評価だけでなく、外部機関によるブランド評価データを参考にする。
難しいKPI例: 社内報・イントラネット
総務や人事が管轄する社内報やイントラネットの活用促進も難しい領域です。情報発信は定量化しづらく、業務の優先順位が低くなりがちです。
「社内報・イントラネット」のKPI例
投資対効果を意識した「社内報・イントラネット」の本質的なKPIを挙げます。この場合、単なる数値のトラッキングだけでなく、社内の組織改善やパフォーマンス向上にどれだけ寄与したかが評価ポイントとなります。
1. 社内報の本質的なKPI例
1-1. 業務改善への貢献度
- 指標:
社内報で共有された情報による具体的な業務改善提案や成功事例の数。 - 背景:
社内報が社員の知識を深め、効率的な業務運用につながるかを評価。 - 具体例:
- 業務改善の成功事例レポート数(月ごとに集計)。
- 社内報内リンクから改善提案フォームへのアクセス数。
1-2. エンゲージメント向上効果
- 指標:
社内報に起因した従業員満足度やエンゲージメントスコアの向上(例えばES調査結果)。 - 背景:
情報共有が組織文化の活性化に寄与しているかを測定。 - 具体例:
- 社内報を読んだ社員のうち「社内報が有益だ」と回答した割合(70%以上を目標)。
- チームや部署単位でのコミュニケーション改善点に関する具体的なフィードバックの数。
1-3. 社員の自己啓発への影響
- 指標:
社内報で紹介した研修・セミナーへの参加率や、その後のスキル向上結果。 - 背景:
社内報が社員の成長支援に寄与しているかを把握。 - 具体例:
- 研修案内記事経由で申し込みをした社員数(過去月比で20%増加目標)。
- 社内報経由で得た知識を活用した業務改善の成功事例(半年間で5件以上)。
2. イントラネットの本質的なKPI例
2-1. 業務効率化への寄与度
- 指標:
イントラネット上のツール・資料を活用した結果、業務効率が改善した事例数や削減された時間。 - 背景:
情報の迅速な取得や適切なツール利用が生産性向上に繋がっているかを測る。 - 具体例:
- 特定の業務マニュアルへのアクセス数とその活用による業務時間削減報告(例: 一人当たり週1時間短縮)。
- イントラネットを通じた申請システムの利用率(例: 利用率80%以上を目標)。
2-2. コミュニケーション活性化への貢献度
- 指標:
部署を越えたコラボレーションプロジェクト数や、質問・回答などの相互作用回数。 - 背景:
イントラネットが縦割り型の組織文化を改善し、横断的な協力を促しているか。 - 具体例:
- 部署間の共同プロジェクト情報が共有された数(例: 月5件以上)。
- フォーラムやチャットツール上での質問回答数の増加(例: 四半期で10%増)。
2-3. 重要情報の到達率
- 指標:
イントラネットを通じて社員に配信された重要情報(例: 新制度や重要方針)が社員全体に浸透した割合。 - 背景:
情報伝達が正確に全社へ行き渡ることが、運用改善やリスク管理に貢献しているかを評価。 - 具体例:
- 特定のポリシー変更案内へのアクセス率(目標: 95%以上)。
- 重要情報に関するクイズやアンケート結果での正答率(例: 平均80%以上)。
本質的なKPIの設計時の注意点
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業務全体との連動性
- KPIが部門や業務のゴールと結びついているかを確認する。
- 社内報・イントラネットの影響が「可視化」できる範囲で設定する。
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定量データと定性データのバランス
- 数値だけでなく、現場の具体的な声やフィードバックを指標に含める。
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PDCAサイクルで評価・改善
- 定期的にKPIの達成度を測定し、内容を更新する柔軟性を持たせる。
これらのKPIにより、単なる閲覧数や利用率だけでなく、社内報・イントラネットが社員の生産性や組織活性化にどのように寄与したかを定量・定性の両面で評価できます。
KPI設定の注意点
- 運用目標を明確化
「全社員が週1回以上閲覧」など具体的な行動目標を定める。 - ツールの使いやすさを優先
使いづらいツールはそもそも活用されにくい。 - 定性的評価も活用
社員の自由記述やコメントから改善ポイントを特定。
まとめ
KPI設定はビジネス戦略において重要な役割を果たしますが、部門や業務によっては非常に難しい場合があります。ブランディングや社内コミュニケーションのような定量化が難しい分野では、適切な具体例と明確な目標設定がカギとなります。
- KPI設定のポイント:
経営視点を持つHRが企業の未来を創る
経営の利益を意識したHR施策は、単なるコストではなく、組織全体の成長を支える重要な投資です。ROICやKPIを正しく設計・活用することで、HRは企業競争力の強化に直接貢献できます。
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