コミュニティマーケティング:コミュニティ「4つの死因」-2.心停止

*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。

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主催者を13年続けていると、様々なコミュニティの盛衰を見ます。

主催者や活動が様々なメディアに取り上げられ賑わっていたものが、数年で「Webページだけが夢の跡」となるのも、昔からよくあります。

コミュニティが終わる原因を「4つの病」に喩えて詳説する第2回は、主催者の心が折れる「心停止」。

それなりに”成功”したコミュニティに多い死因です。

大半の死因は始まりに孕まれているので、コミュニティを始める人のための、長く続く場を作るヒントになればと思います。

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コミュニティ「4つの死因」
1. がん | 2. 心停止*本稿 | 3. 老衰  | 4. 脳死

なお、本稿で言及するのは個人やボランタリーのコミュニティで、ビジネス系のものとは目的や前提が若干異なります。
本質に大差は無いですが、各人に合わせご参考ください。

 

コミュニティ「4つの死因」1)症状

消耗が意欲を上回り、新しい活動をする力を失う

 

コミュニティ「4つの死因」2)原因

明るい幻想と現実のギャップ

立ち上げ時は明るい未来を描くものの、現実は以下かもしれません。

・手伝うと表明した人々は、結局手伝わない
↓無駄に集まるだけの運営会議
↓自己主張が無駄に強いメンバーに消耗する
↓自分で考え自主的に動く人がいない
↓結果、ほとんど全部自分でやる
↓パッとしない企画しか出来ない
↓企業やメディアや有名人に相手にされない
↓イベントを公開しても無風
↓ポスト爆弾や広告など力業に忙殺される
↓友人や知り合いに頼み込んで来てもらう
↓お金を払った人より、招待客の方が多い
↓アンケートは酷評
(それ以前に回答してくれない)
↓赤字を自腹で補填
↓メンバーが大人の口実で抜けていく…

こうなれば3回も持たず終わるでしょう。

 

消耗が増え、意欲は減る

実は、発展した方が消耗することが増えます

・集客、運営など、負荷と複雑性が高まる
・関係者が増え、利害や感情の調整が増える
フリーライダー(タダ乗り)が出てくる

知名度の高まりと共に、主催者が善意、時間、精神力、信用、金を投入して築き上げたものを、我が物顔で消費する人々が混じり始めます。

非営利を表明し、銀座の客単価8,000円代で当日払い3,000円・ペナルティ無しで、赤字にならず剰余金も出ないようにギリギリの調整に苦心しているのに、「結構儲かってるんじゃないですかw」と言われる。

300人規模のイベントを数人で仕切った後、休日夜に近くで唯一入れる、やっと探した二次会の居酒屋を案内すると「私基本、居酒屋行かないんだけど」と言われる。

精魂込めた講座で、的外れの自己主張で酷評される。

貢献もしていないのに、運営メンバーをアピールする人。
関係者でもないのに関係者のように吹聴する人。

上から目線のゲストに、自己都合や思い込みで、感情的にものを言われる。

営業、”人脈”、ナンパなど、自分の利益にしか興味ない人や、セクハラ、ストーカー、マルチ、詐欺などが疑われることも出ます。

社会的立場がある人に、裏の顔があることもあります。
善意と盲信している人やサイコパスは、簡単には見分けられません。

細心の注意を払っても、その混入は完全には防げません。

主催者を知らない初参加者が嫌な思いをすれば、主催者も同類と思われます。

善意で奉仕し、そんな連中を利して、信用まで失うとなれば、続けることに疑問が生じます。

意欲が尽きる時が、心の折れる時

資金が尽きると会社が潰れるように、主催者の意欲が尽きた時、コミュニティは終わります。

 

そこそこ「成功」を収めると意欲も減りがちです。

・得るものを得て、もう満足した
・十分楽しんで、好奇心が弱くなった
・結婚・転職・異動・昇進で、環境が変わった
・参加者やメンバーとの関係が変化した

そうして、消耗させる力が意欲を上回り続け、新しいことをする意欲が尽きた時が、心折れる時です。

逆に、どんなグダグダでも、主催者の気持ちさえ保てば、良し悪しは別として、会は続きます。

 

コミュニティ「4つの死因」3)予防

<何よりも「実行」>

最初は独りで小さくていいので、早く実行します。
試行錯誤しながら、人を選び、目的などの基盤を固めます。

その上で必要なら、ビジョンを掲げ、人を増やし、知名度を獲得すればいいでしょう。

実行前に運営体制を作ろうとしない

動き出さないと軸は定まりません。
軸が定まる前に形だけの「運営メンバー」を集めても、何も動きません。
むしろ、とりあえず手を挙げただけの、実働しない人を辞めさせる手間がかかります。

「遠くまで行きたければ皆で行け」は、歩き始める前に仲間を探す口実ではありません。
歩み始めた人について残った人が、遠くに行ける仲間になるのです。


Amazon:君に友だちはいらない (日本語) 単行本 – 瀧本 哲史  (著)

 

仲間は不要?

「一人で」というのは、ベースが固まる前に理由なく人に頼るべきではない、という覚悟の問題であり、長期的には仲間は必要です。
特に「相棒」がいると、困難な時も精神の支えになります。

・主催者と同じくらいの熱量がある
・冷静な参加者視点で、建設的な提案ができる
・主催者を能力的に補完している
任せて安心できる
全体観を持ち、先読みして、自走してくれる

最初からいることが理想ですが、苦楽を共にしながら見つかる、というのが実際でしょう。

参加者も一人一人見極める

がん」で述べたように、目的なく人を増やせば「死」が近づきます。
最初から大規模にする必要はありません。

何を実現するために、どんな人が、どれくらい必要なのかを考えつつ、一人一人、一緒に何かをしながら、互いに見極めます。

最初から有名になる必要もありません。

知名度のみで来る人は目的意識が低く、扱いに困る可能性が高いです。
貢献する人は、知名度がなくても自分で探し、中身を見極めて来ます。

 

机上でビジョンを作らない

試行して考えが固まり、口説いて言葉が磨かれます。
実践もせずに作った机上の言葉に人は踊りません。

<初期は継続を第一に>

目的、ビジョン、方針、体制、ファンなどは、試行錯誤の中で固まります。
初期に最も重要なのは、続けることです。

継続には推進力と、抵抗を極小化する仕組みが必要です。

続けられたことが「好き」なこと

好きなら大変でも続けられます。
続ければ得意になり、仕事になる場合もあります。
仕事にまでせずとも、自ずと極めます。

とはいえ「何が好きか」即答できる人は少ないでしょう。
同義反復ですが「続けられたことが好きなこと」と考えます。

最初は色々試して、自分の心のツボを見出すのです。

1)誰に言われずとも、無意識で常に考え、自ずと体が動いている
2)より良いものにしようと、細部までこだわれる

これらも、行動し内省する中で自覚していきます。

 

仕組み1:赤字にならない収支構造

赤字は心が折れるので、収支を設計・構築します。

参加者に価値のないことを削り、固定費を削減・変動費化すれば、赤字にはなりません。

また、参加費を払うに値するものにします。

協賛イベントでも、参加費で黒字になるようにしておきます。
対価を払うに値しないものに、人は来なくなり、スポンサーも離れます。
収支も安定もしません。

 

仕組み2:人に依存しないオペレーション

100人程度のセミナーは1人で回せます。
誰でも一人で当日運営できるなら、特定の人を調整する必要はありません。

その観点でプロセスを見直せば実現できます。
未経験でも、一人で回せる規模で始めれば、全体を把握して仕組化できます。
そこから規模を上げれば、汎用化できます。

効率化で最も大事なのは「やめる」ことです。
無駄を自動化・効率化しても無駄だからです。

精神論で人は動かないので、ワンオペにより、参加者価値のないものをやめざるを得ない状況に、自ら追い込むのです。

人に頼むのは、そこまで突き詰めてからです。

 

仕組み3:最小の意思決定

一人で決めれば議論・調整の負荷がありません。

要件上、合議制にしなければならない場合、試用期間や客観的な任免基準など、実働する人以外は残れない仕組みにします。
会議日程のルール化など、調整工数を最少化も工夫します。

 

<現実と向き合う>

人の欲望に向き合う

・参加者が、会の趣旨に共感し、主催者が提供するものを求めて来る
・運営メンバーが、同じ目標を共有し、自主的に手伝ってくれる

いずれも主催者都合の妄想です。

参加者も協力者も、自分の欲望を満たしに来ることを直視します。

その上で、相手の目的充足行動が、自身の目的に合致するようインセンティブを設計します。
また、価値を一方的に得ようとする行為が見合わなくなる仕掛けを作らなければなりません。

参加者・協力者の獲得や、来るべきフリーライダーとの対峙にも、その観点は不可欠です。

自身に向き合う

「体制を組んで、大々的にやり、注目されたい」という思いは、明確な目的のない、自分の欲や弱さではないか、自問自答しましょう。

一人でやる覚悟がないから、とりあえず運営メンバーを集めるのでは?
面倒だから、仕事を丸投げするのでは?
自分が有名になりたいから、ビジョンを打ち出し、大規模イベントをやり、メディアに取り上げられたいのでは?
皆に認めてもらいたいから、たくさんの人に来てもらいたいのでは?
イケてると思われたいから、有名人と一緒に何かをしたいのでは?

明確な理由に基づきNoと言えなければ、無意識の内に不安、自己顕示欲、自己承認欲求などに囚われているかもしれません。

短期の直接利益を期待しない

コミュニティは、課題を直接解決するものではありません。

・評価が欲しければ、実力で成果を出す
・有名人と知り合いたければ、自分が有名になる
・メディアに出たければ、ニュースになる仕事をする
・新規事業をしたければ、自ら立ち上げる
・新たなアイデアは、自分で考える
・創業メンバーは、直接口説いて回る
・資金調達がしたければ、投資家に提案する
・転職したければ、成果を出してレジュメを書く
・副業が欲しければ、営業する

という正攻法が早く確実です。

相手の価値を考えたGIVEを、長期に積み重ねておくと、正攻法の効果が増幅されることがあります。

打算は見抜かれますし、長期の信用蓄積が必要なので、短期で直接のご利益をコミュニティに期待しても、失望することになります。

コミュニティで自己実現しているように見える人もいますが、それは表には出ない信用蓄積と実力の結果のはずです。

 

それ、コミュニティ必要?

コミュニティ関係者は、コミュニティありきで考えないよう気をつける必要があります。

例えば、活動やビジネスを周知させるには、せいぜい100人のイベントより、数万人単位で波及するプロモーションの方が良さそうです。

何かの課題の解決に、コミュニティを無理に当てはめるのではなく、その課題はコミュニティで解決すべきものか見極める方が先です。

主催者の内面は見透かされる

主催者が、自身の内面から目を逸らしても、参加者は見抜きます

・本業で満たされない自己承認欲求
・メディアに載り、有名人と知り合いたい名誉欲
・本業への不満を心理的に補償する「ごっこ」
・転職、起業、副業などへの下心

自ずと見合う面々が残り、会場の空気感や参加者の人相に滲み出ます。
結果、コミュニティは主催者の人間性を反映します。

案内文一つ見ただけでも、細部に神を宿すまでの思い入れがあるか、自分のためにやっているかは分かります。

弱さや打算が皆無の人はいないでしょう。
しかし、それらを直視した上で、善意の目的・使命に昇華させ、参加者の価値と整合させなければ、健全な成長はできません。

 

コミュニティ「4つの死因」4)対症

気持ちが折れそうになってから立て直すのは、基本的に非常に困難です。
ただ、健全な基盤があれば、持ち直すことができるかもしれません。

自分の外に拠り所を持つ

コアなファンや運営メンバーに思い入れのある人々がいれば、その人々のためにもう少し頑張ろうと思えるかもしれません。
そのためには、入念に人選し、関係を深めておくことが前提です。

自身が殉ずるべき未来の世界かもしれません。
但し、己に嘘はつき通せないので、心より殉じられるものである必要があります。

本質以外、全て止める

紹介制で成長し、やがて肥大化した会が、イベントをほぼ停止したことがあります。
元々の趣旨である、顔が見える会に戻すためです。

本質から外れることが目に余るようになったら、本当に大切なもの以外、思い切って止めるのも一案です。

 

コミュニティ「4つの死因」さいごに

始める前から心の折れそうな話をしたかもしれませんが、いずれも現実に直面することです。

コミュニティ主催者は、やりきれないことが多い割に役得などありません。
役得を期待して始めると必ず失敗します。

それでもなお、コミュニティは良いと信じます。

善なる動機で、適切にインセンティブ設計と運営がなされている場から、多くの良い縁が生じ、様々な価値が生み出されるのを見てきました。

見返りを求めないGIVEを重ね、人に真摯に価値を提供し続ければ、やがて期せずして、人生を変えるような恩が返ってくることもあります。

本稿も、一人でも多くの方が一歩を踏み出し、良質な場をつくる後押しになれば幸いです。

 

◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki

conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授

大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
 

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◆代表プロフィール

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株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温

マーケティングリサーチのプラットフォームの企業で、 最年少で事業部を立ち上げ、広告予算ほぼゼロで、国内トップの実績を達成。

中小・スタートアップ企業のマーケティングに関する構造的課題を痛感し、それを解決するため、株式会社まーけっちを創業。大手企業・国家機関・スタートアップなど100社以上の戦略支援を行い、コミットと売り上げ貢献成果に定評がある。上智大学外国語学部卒。


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