戦略・事業
カオスマップの作り方”完全解説”〜勝手に出版企画:概要編
2021.02.24
*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。
本を出すつもりで、勝手に出版企画を書く試み。今回は出版企画の概要部分について。
目次とあらすじを描いた構成編はこちらより。
概要
市場にある製品・サービスを分類して一枚のスライドにまとめる「カオスマップ」。
事業開発やマーケティングでの機会発見に用いられるだけでなく、分かりやすく拡散されやすいため、スタートアップがPRに活用することも多いです。
市場にあるビジネスをしらべ尽くして分析するので、マップ作りはビジネスモデルや戦略を実例に基づき理解でき、分析の枠組みを体得する良いトレーニングになります。
一方、企画や分析が甘いマップを粗製して評判を下げる事例も散見されます。分析をせず製品・サービスのピックアップだけしても、トレーニングにはなりません。
本著では、カオスマップを自ら作り、業界の誰もが知るまでに拡散させた事業開発の実践家が、誰でも良いマップを作れる方法論を詳しく述べます。
良いマップを作り、世に知らしめる実践を通じて体得できる企画、調査、分析、拡散のノウハウは、事業創造を志向する多くの人に役立つものです。
コンテンツ:何を書くのか、何が違うのか
直接的にはカオスマップの作り方について。
読み手視点で言い換えると以下になります。
・市場の新たな機会を見出す調査・分析手法
・市場構造や戦略を理解する枠組みを身につけるトレーニング法
具体的な手順は以下の通りです。
カオスマップを作る手順
1)ある市場の範囲を定義し
2)その範囲内の主なサービス・製品のロゴを網羅的にピックアップし
3)ビジネスモデルや競争戦略などの基準に基づいたカテゴリで括って
4)全体像を見て取れるように選別し、1枚のスライドに掲載する
特徴は網羅的・多角的に分析すること。
既存手法と比べた特徴
1)網羅的に調べ上げる
⇄特定対象を際立たせる・仮説検証
2)多様な対象を分析→市場を多角的に分析
⇄特定対象を深く調べる
効果は以下の通りです。
1)狙う市場を多角的に捉え、思いがけない発見を得る
既存手法は、焦点を絞って仮説検証するので効率は良いですが、「自分の知っている範疇」の中で調べてしまいがちです。
それに対し、カオスマップ作りは、特定市場のプレイヤーを網羅的に調べ尽くし、様々なビジネスモデルを分析・分類し、業界を俯瞰的・構造的に理解できます。自分の市場の捉え方を再構成するので、新しく生まれたビジネスモデルや市場機会など、思いがけない発見をできる可能性も高いと言えます。
2)自社や競合の競争戦略を、他プレイヤーの視点で客観視できる
顧客、競合、代替品、異なるビジネスモデルや競争戦略を取る企業などの多様なプレイヤーの観点で市場を分析する中で、自社の戦略を客観的・多角的に捉え直すことができます。
3)事業や市場の構造を捉える汎用的な枠組みを体得できる
多種多様なビジネスモデルを、短期間で大量に分析することで、様々なビジネスモデルを実例を通じて理解します。
また、市場を細分化した複数のセグメントを比較分析することで、ビジネスモデルの違いによる競争環境・戦略・成功要因の違いを体感することもできます。
4)拡散すれば、ニュース材料が乏しくても自社を知ってもらえる
カオスマップは、パッと見て価値がありそうな印象を与えるため、シェアされやすい性質があります。
情報価値があるマップを作り、うまく拡散できれば、PR材料に乏しいスタートアップでも自社を業界の主要プレイヤーや投資家に知ってもらうことができるかもしれません。
ターゲット:誰にどう役に立つか
1)マーケティング・事業開発・営業:機会発見、戦略立案
新規事業を開発する人、マーケティング戦略を立てる人が、開拓しようと狙う市場を多角的に分析し、機会を見出すことに役立ちます。
また、市場に加え、競合や自社を多角的に分析できれば、効果的な競争戦略や営業プランを立てられるようになります。
2)人材開発:分析能力向上、自社戦略理解
プロダクトを調べピックアップしていく際には、ビジネスモデルや戦略を全件推測し、すぐ分からなければ追加調査をするので、通り一遍の講義や練習より深く、実務で使える理解できます。
・200件調べるなら、200回もの簡易な分析をすることになる
・多様なビジネスモデルや戦略を、実例に基づき繰り返し理解する
一度分析の枠組みを体得してしまえば、新しい製品・サービスや市場を見たときに、即座に大まかな把握ができるようになるでしょう。
事業開発に限らず、マーケティングや営業戦略を立てる際の基礎となる分析能力を身につけられるでしょう。
また、研修観点では以下のような特徴もあります。
a. 誰でもできる調査で、誰でも作れる成果物でありながら、
b. 以下が誰が見ても分かるように成果物に反映される
・読み手・市場・事業・戦略への理解の深さ
・同じ時間内での調査の巧拙
多数のメンバーで複数のチームを組成し、同じテーマを与えても、アウトプットの優劣が一目でわかるくらい差がつきます。
自社のビジネスモデルや戦略を多くのメンバーが深く理解するにあたり、互いに競争しながら学び合える研修コンテンツとしても使えます。
3)スタートアップ:戦略立案、知名度・信用UP→出資、提携、営業
これから本格的に戦略を立てる起業家、まだプロダクトがなく、発信材料に乏しいスタートアップにとって、以下のように役立つでしょう。
a. マップやレポートをリリースすれば、業界を包括的かつ的確に理解していることを示せる
b. それがメディアにも取り上げられれば、信用の強化にもなる
c. カオスマップを拡散できれば、将来のユーザー、提携先、投資家となり得る人々に、存在を知ってもらう機会となる
d. 市場を徹底的に調べておけば、投資家などから突っ込まれた時にも、調べ尽くした事実をベースに的確に回答できる
あくまで戦略や論理を組み立てる素材や洞察の元であって、マップを作っただけで全てが解決するわけではありませんが、きちんと理解すれば役に立つことは間違いありません。
類書の候補
カオスマップそのものの本は、おそらくニッチすぎるため、ないのですが、イメージとしては以下のような本と、一部近い要素があると考えています。
1)ビジネスに必要なリサーチの入門書
2)自分でできるリサーチ力の実践トレーニング法
3)ビジネスモデルを分析する方法論と実例集
著者:書くに値する根拠
事業開発・起業・営業の実践経験
・ソニー、サムスン、CSKなどで実務に携わってきた
・MBAなどで様々なリサーチの方法論を習得
マップを作りバズらせた実績
・マップを作ってバズらせ、メディアに掲載させた
・業界団体設立を主導し、資金調達につなげた
調査・作成手法を方法論化し、教えてきた実績
・作り方を方法論化・記事化して、スライドやnoteにまとめた
・人に教え、受講者が実際にマップを作った
出版の動機
ロマン(意義)
良いマップが作られ公開することは、価値ある情報を必要とする多くの人に届けることになります。
しかし、公開されるマップは劇的に増えましたが、安易に作成した感のあるものも増えている印象です。
方法論を広めることで、良いマップが増えることに貢献したいと考えます。
また、マップ作りを実践する人を増やし、事業開発や起業、その他ビジネスで上手くいく確率を高めることにも寄与したいと思います。
また、マップを作るために調査分析する過程は非常に孤独で時間がかかり、心が折れやすいものです。
発表されるマップも、どこかにまとまってあるわけでもありません。
そこで、実践者がつながり、刺激し合いながらマップを作る基盤として、また、作られたマップを共有する場としてのコミュニティ基盤を作ろうと思います。
その際に、実践手法を書籍としてまとめ、色々なところで教えている人が作ったコミュニティであれば、信用もあり参加による実利も得られそうに見えるため、入りやすくなるでしょう。
そういったことにこの本を役立てたいと考えております。
ソロバン(実利)
引き続きカオスマップの作り方を伝える公開セミナーを実施しようと思いますが、参加費はせいぜい3,000円でしょう。
持続可能性の観点からは少し心許ないので、参加して満足頂いた方に電子書籍を買ってもらえれば少しは足しになります。
逆に、著者であることで講師の信憑性も高まるでしょう。
また、カオスマップ作りは企業の若手向けの研修に合うと思うので、そのプロモーションに繋がれば、本を書き、販促する努力が見合うと思います。
備考:棲み分け、よくある誤解
よく勘違いされやすい点を、方法論の特徴と照らし合わせながら区別します。
「カオスマップ」の性質
・調査初期段階の、概要把握が目的
・全体構造を俯瞰して見せる「表現手法」
・広く薄い定性分析により作成
・調査・分析を通じた多角的視点の獲得が「学び」
1)メッセージを裏付ける分析フレームワークではない
→全体を「ざっくり見せる」表現手法
マップは企画立案のための調査初期段階で作られるもので、全体象を一目で把握させるための「表現手法」でしかありません。
全体を網羅的に示すためには、自社の戦略と最終的に関係ないものの含めて網羅的にサービスや製品をピックアップしなければなりません。
よって、自社のポジションを際立たせるために特定の製品・サービスを取捨することはありません。それは二軸のチャートなど、他のフレームワークで表現すべきものです。
マップ自体が何かのメッセージ持ち、それをフレームワークに基づく分析で裏付けるというものでもありません。
あくまで全体をざっくり見せる表現手法で、作るプロセスではカテゴリ区分のために分析はしますが、マップ自体に分析の要素は含まれないからです。
2)仮説検証のためのものではない
→仮説を立てるヒントとしての「準備運動」
調べ始めで検証する仮説はなく、むしろ仮説のヒントを得るための最初のエクササイズとも言えます。
あるいは、手持ちの知識ではありきたりの仮説しか出なさそうな場合に、未知の部分を事実に基づいて把握し、視野を広げるためのものです。
マップそのものは洞察やメッセージを直接的にサポートするものでもありません。
3)1つ1つを厳密には調べない
→多様な対象を網羅的に調べ、多角的に理解することが価値
自社の戦略を立てる段階では、意味ある比較対象をそれぞれ深く分析しますが、カオスマップは調査の初期段階で全体像を把握するためのものです。
200から300くらいの製品・サービスを網羅的に広く、しかし1つ1つはカテゴリの区分をするのに必要な程度の深掘りで十分です。
それ以上の詳しい分析は、調査・立案の段階が進んで、自社の戦略等の仮説ができた段階で、比較対象とすべき絞り込んだ対象にのみすべきことです。
4)定量分析は含まない
→基本はビジネスモデルや競争戦略などの定性分析
カオスマップは、特定の市場を、ビジネスモデルや戦略でざっくり切り分け、それぞれのカテゴリの中にどんなサービス・製品があるかの全体像を見せるだけのものなので、大企業もスタートアップも等しく1つのロゴをサイズを適度に揃えて載せます。
シェアなど定量情報を見せたければ、パイチャートやインフォグラフィックスでビジュアルに見せるか、単なるランキングで良いのです。
調査・分析の段階でも、リストをデータベースとして活用したり、他の分析で用いるために、把握可能な限りで、売り上げ・利益・資本金・従業員数などの定量情報は記録しますが、マップ作成に直接必要な情報ではありません。
5)構造を直接厳密に示すものではない
→「全体像」を、実態・目的・読み手に応じて臨機応変に見せる
バリューチェーン、ビジネスモデルキャンパス、5つの力のような、構造を直接的に表し、そこからメッセージを導き出すものではありません。
また、繰り返し述べているように、そのような分析フレームワークではありません。
あくまで全体像を見せる「表現手法」であり、分析は分類の基準と根拠を明確にするまでで十分です。
分類はMECE(漏れなくダブりなく)やApple to Apple(同じ基準で比較する)である必要すらなく、見やすさの方が重視されます。
より適切にいうと、厳密さを求めるあまりカテゴリが細分化するくらいなら、一目でわかる情報の方を優先してカテゴリを大括りにすることもあるし、同じカテゴリの中に多数のプレイヤーが乱立している場合、逆により細かく分類して、見た目のバランスをとる場合もあるからです。
その判断は、実態に応じ、想定する読み手に見やすく、自身の目的に沿うように、臨機応変に判断します。
ただし恣意的で良いという訳ではなく、明確な根拠をもって説明できなければなりません。
6)フレームワークや見せ方を教えるものではない
→企画や調査のプロセス自体に学びがある
本書で伝えるのはカオスマップという表現手法1つだけで、それを作るための検索や分析も特別なものではありません。
ただ、新規事業の担当者や起業家ですら、自身の見ている、理解している範囲内で仮説検証・戦略立案している人が大半ではないでしょうか。
市場を網羅的に調べ、事実に基づいて市場の機会や競合分析をする人はおそらく極めて少なく、それを実際やってみること自体に学びがあると考えます。
また、それを通し、様々な企業のビジネスモデルや競争戦略を、ファクトベースで、広く浅くではあるけれど自分で把握するので、フレームワーク、ビジネスモデル、リサーチの本を読むよりはるかに、それらの理解と手法を体得するのに役立つ、ということです。
以上、出版企画の概要編でした。
目次とあらすじを書いた後編はこちらより。
◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki
conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
◆著者プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。
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