採用・人材
オンライングループの規律を作る難しさ
2021.02.24
*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。
facebookグループやLINEオープンチャットのようなオンライン上のグループは簡単に作れ、最初は人集めや活性化に苦労し、それを乗り越えると、今度は投稿の規律を作り保つのに苦労します。
承認制にすれば活性が下がり手間もかかります。承認不要にして事後対応にすると、趣旨に合わない投稿が一旦は人目に触れてしまいます。
どう対応するかも難しいところです。
今日は主催者として、投稿の規律をどう維持するかについて考えてみます。
「タダのり」投稿は避けられない
人数が多いグループは、放っておくとすぐに宣伝で溢れます。
告知する側からすれば、案内をコピペして投稿ボタンを押すだけの工数で、無料で宣伝できる訳で、こんなに楽な話はありません。
グループの管理者は、思いを持って場を立ち上げ、苦労をして人を集め、場の趣旨にあった活発なやりとりを陰に陽に促して、そこから人が人を呼ぶ流れを作って、それだけの質量の場にしています。
その手数と苦労への敬意もなく、場の趣旨すら踏まえない単純コピペを、投稿者の一方的なベネフィットのために投稿されたら「お前の宣伝のためにこの場を作ったわけではない」という気持ちになります。
しかし、投稿者のインセンティブを考えると、そうすることが合理的な行動なので、どう抑止するかが、主催者の現実的な対応となります。
活性と規律のバランスに配慮する
好ましくない投稿を抑止することも大事なのですが、かといって最初からあれをするなこれをするなと書いても、参加した人の熱意が弱まり、投稿がなく場の活性が下がります。
最初は投稿の数が多くなるようリードしつつ、趣旨から離れている投稿への可否基準を徐々に高めていくような匙加減が求められます。
時々「マルチ、宗教、ナンパ云々禁止」と書いているところがあります。
こんなことまで言わないといけない程度の人も見境なく入れる場なのかと公言するようなもので、まともな人にむしろ敬遠される気がするので、私は書かないようにしています。
方針を明示する
グループを作る時点で、粗くても方針は明示しておきます。
・この場で好ましい投稿はどんなものか
・理想とは言えないが活性化のために許容する範囲はどこからどこまでか
・ここから先は許容されない要件は何か
因みに、私がオンライン化の知見共有グループを作った際は、以下のように考えました。
◆望ましい
・趣旨に則った、困りごとの質問と回答
・一緒に何かをやる人を募ること◆許容範囲
・趣旨に関連し、内容がグループ参加者にとって価値あると判断した低額のオンラインセミナーの告知◆不可
・趣旨と関係ないセミナーで、実施形態が単にオンラインなだけのもの
・高額なセミナー
・高額商材に誘導する目的の無料セミナー
疑わしい投稿は、投稿者の個人アカウントを見たり、主催者名で検索して活動内容までチェックします。
疑いを払拭できないものは削除します。
多目に見る筋合いは無いからです。
許容の範囲内でも以下は削除します。
・同じ団体のからの度重なる投稿
(目安は月に1〜2回まで)
・参加メンバーから「通報」があった投稿
これらは日々粛々と対応し、基準はグループの説明や固定投稿で明示してあります。
感情的な対応はしない
人により許容範囲の解釈の幅があるので、基準を明示しても、悪意なく主催者の意に沿わない投稿がされる場合があります。
時折、そういった投稿に吊し上げるようなコメントを入れたり、見ず知らずの投稿者に攻撃的な個別メッセージを送る人がいます。
無関係な投稿の多さに苛立つ気持ちは分かるのですが、理性的ではない物言いを自ら晒すことはお勧めしません。
個別のメッセージであろうとそれを受け取った人が画面をキャプチャして晒すことも容易です。
他人は経緯など見ず、字面にのみ反応します。
意図的な「タダのり」ではなく、解釈の違いによるものなら、相互の認識の違いも汲んで説明すれば説明すれば、むしろファンになるかもしれません。
感情的な言葉で攻撃してしまえば、見た人には人格を疑われ、相手には反感を持たれ、下手をすれば悪評を広めるだけです。
対応スタンスも決めておく
そもそも、わざわざ言わずにそっと消せば良いんじゃないか、という考えもあります。
これは、その場における参加者との関わりをどう考えるかによります。
互いを理解した密な関係を前提とした場づくりをするならば、都度説明する方が良いですが、ゆるい繋がりの場なら黙って消すだけで良いでしょう。
facebookグループはその辺便利にできていて、管理者は投稿を消せるだけでなく、特定の人の投稿だけ事前承認にすることもできます。
私が立ち上げ管理する「ゆる共」では、以下のように基準を明示して、抵触したものは即時消しています。
※宣伝投稿について
宣伝投稿自体は問題ありませんが、場の趣旨と合致し、参加者に価値ある旨を簡潔に添えた上での投稿をお勧めします。
趣旨に沿うと判断できない投稿は、削除せざるを得なくなる旨、ご理解賜れれば幸いです。
他のグループにも同一文面で投稿することは、場の趣旨や運営者の尽力に配慮せず、一方的な自己利益のために利用する行為と見なされやすいので、ご注意下さい。
また、同一イベントの案内は1度、同じ人や団体による宣伝投稿は月に2回までを目安にお願いします。※その他
個別の事前確認は手間なので不要、自己判断で投稿下さい。謝辞や了解を取った旨等、参加者に価値がない前置きは不要です。
相応しくなければそっと削除するのでご安心下さいw
相応しくないと思ったものは遠慮なく報告下さい。それは場に価値を維持する、歓迎すべき行動です。
違反報告のあったものは削除します。
上記趣旨に基づき、運営者が是非の最終判断をします。
なお、オトナの扱い&性善説を基本としたいので、誹謗中傷・公序良俗云々、常識的なNGを細かくは書きません。
ご不明な点があれば、気軽にコメント下さい。
読まれることは期待しておらず、読みもしないで投稿するような人が仮に文句を言ったとしても、「ここに書いてあるし、その理由は合理的なものだよね」と言えるための根拠を予め示すことが目的です。
ルールを書いておかないと、恣意的と思われる可能性があるので、そのようにしています。
友人でも多目に見ることはしませんし、主催者であっても自己の利益のためにルールを曲げることは許されません。
時には「怒ってみせる」
とはいえ、特に人が増え始めた段階では、無関係告知や「高収入を得る方法、知りたい人は個別メッセください」的なものもあります。
それが目立ち始めた段階など、時々公開で怒りを見せる、その時点の参加者に、主催者が場に掛ける真剣度を示すことが有効な場合があります。
ある主催者が結構ストレートに「あんまり度が過ぎるとこのグループ自体閉じるぞ」と言っているのを見たことがあります。それはそれで彼のキャラに合ってて良く、私はそういう性格ではない「悲しいです」的な物言いをします。
勿論、実際は怒りと不快感だけですが、それをストレートに言って得をすることもないので、方便としてそう言っているだけです。
そもそもの集め方にも起因
まあ、こんな苦労をするのも人の集め方をオープンにしすぎているからということもあります。
私がよくできているなと思うのは、LINEの人事の青田さんがやっているオープンチャットです。
そもそも人事の人しか登録していないため無関係の発言が少ない上、フィルターやNGワードなどのシステム機能を使って場の秩序を維持しているようです。
とはいえ、手間はそれなりにかけているとは思いますが。
因みに「スタートアップ情報と相談局」を主催するけんすうさんの運営スタンスは示唆に富んでいます。
トークルームをうまく運営するための工夫
素行が悪い人の投稿はなるべく削除しない、なるべくBANしない、貢献度が高い優良なユーザーが居続けないようにする、とかです!
※貢献度高いユーザーにとって居心地のいい場所にしすぎてしまうと、基本的にはコミュニティは、衰退の方向にいきやすいので危険度が高いので、一番警戒すべきかなと思っています。
(例)“100人のサークルがあったとして、そのうち、50人くらいが、何年も前からいる古参の人である”という場合に、新しい人が入りづらくなってしまう。
一般的にもそれが正しいとされることの逆の方法でも、きちんとした洞察に基づき整合的に運用されるなら、うまく回るという好例でしょう。
私の場合は、リモートワークやオンラインイベントという、幅広い人が入り得る軸を定めたので、興味ある人は誰でも入れるように割り切り、その代償として無関係な宣伝が増えることは覚悟していました。
間口の広い狭い自体に良し悪しはありません。
自分の取り組みの性質、オープン/クローズドの方針、運営の方法が整合していることです。
やって分かることも多い
これらは複数のタイプの場づくりをしてわかることも多いので、自分で色々当事者になってみると良いです。
全てで主催である必要はありません。
あるものは運営の一員、あるものはコアな参加者といったように、濃淡はつけつつ当事者であるようにすれば、それなりに学びはあります。
ぜひ、試してみてください。
オンラインコミュニティの例
私が立ち上げて運営しているグループです。よろしければ登録してみてください。
◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki
conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
◆著者プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。