コンテンツマーケティング:決裁者に読ませる文章術

*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。

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決裁者に読ませる文章術の極意 簡単に背景紹介

ソニーでは、政策提言の部門で、副会長、CTO、CTOなどが政府委員会に出席する際の事前資料やカンペを作り、CEO以下役員向け報告書を発行していました。

サムスン電子では、日本法人の経営企画部門で、グループ全体の司令塔とも言われる会長スタッフ組織への報告書を作成していました(ちなみに日本語と韓国語は文法構造が同じなので、そのままの構造で訳せます)。

いずれも、多忙なグローバル企業経営陣が、速読で理解できる1〜数枚のWord文書を、簡潔で合理的な文章で書く必要があります。

その辺の経験を振り返ってまとめてみました。

なお、今回の紹介するのは、ビジネス用途の感情や遊びを削った文体ですが、目的、コンテクスト、ターゲットが異なれば文体も異なります。私の今の仕事であるセミナーの案内文を書く時は違う文体にしています。

決裁者に読ませる文章術の極意 読み手が期待する形式にする

大企業では文書の構成が決められている場合があり、サムスンでは、会長宛て報告書は全世界で書式が統一されていました。内容以前の理由で読み手に違和感を感じさせないよう、まずは形式は守ります。

 

経営者が求めるのは判断のための示唆

例えば、日本の国政選挙について報告するなら、結果だけでは「ニュースを転送しているのと同じ」と言われるので、今後の見通し、事業への影響、自社の対処、判断材料まで書きます。

野党情報のような、判断に関係ない詳細情報を”念のために”入れると「お勉強ではない」と言われるので、判断に不要なものは削ります。

閣僚名簿など、本編に入れるまでではないが必要な補足情報は、備考などで別に記します。

 

決裁者に読ませる文章術の極意 速読できる文章の5要素

一言で言うと、視覚的に読み取れ、余計な思考をさせない文章です。

視覚的:見てすぐ意味が分かる
簡潔:機能が説明できない修飾がない
明解:読み手によって解釈が異ならない
合理的:思考に沿い、視線を前後させない
構造的:構造と要点が一目でわかる

視覚的にも速読する気になる分量にするために、1文1~1.5行、1パラグラフ3~5行を目安に、1パラグラフ3文前後にします。PCとスマホでは1行の字数が異なりますが、読み手の環境に合わせます。

 

決裁者に読ませる文章術の極意 速読できる文章は、聞いただけでも頭に入る

「小学生に分かる」言葉で「電話でオカンに話して伝わる」言い回しを心がけます。

難しい漢語、カタカナ語、専門用語は使わず、易しい漢字と大和言葉を選びます。漢語が多いと文章が「黒く」見えるので、その場合は易しい言葉に置き換えます。

視覚的に「締める」ために漢語、カタカナ語、専門用語を用いる

聞く場合と異なり、読む文章は視覚を有効に使えます。漢語やカタカナ語も、見てすぐ意味が取れる単語なら、使った方が文が締まります。

業務文書なので、専門用語も必要最低限使わないと不自然になります。

他との違い → 差異化:より簡潔に言う
対象→ターゲット:「狙う」意味を含める
撮像素子、DRAM:使わない方が不自然

7つの例にみる、読み手の視線の構成

忙しい人は、思考の流れを妨げられると読むのをやめるので、相手の視線と思考をリードするよう意識します。

要素は左から右、上から下に並べるのが自然です。視線が飛ぶと思考が妨げられるので、関係要素は離さないようにします。冗長にならないよう、要素は2つに絞ります。

・前→後(時系列、順序)
・原因→結果 *原因が長い場合は、主張→理由にする
・仮定・前提→主文
・概要→詳細
・高→低(優先順位、頻度)
・AよりB(比較)
・AとB(並列)

疑問は事前に抑止、発生したら即解消

直感に反しそうなことを言う場合、前提条件をつけて、疑問を抑えます。例えば「イベントでは集客を気にしない」と言われたら、そうかな?と思うでしょう。「イベントの立ち上げ段階では」と限定することで、成り立つ理由があるのだろうと推測させます。

同時に理由を知りたくなるはずなので「狙った層に刺さるかが成否のポイントで、ターゲット外の参加はむしろノイズになるから」と続け、疑問を即座に解消します。

なお、長すぎる前置きは相手を苛立たせるので簡潔にするか、どうしても長くなるなら、後ろに理由として繋げます。

 

決裁者に読ませる文章術の極意 文章を冗長にする3つの要因と対策

主な要因は、自信がなく逃げの表現をしていること、刈り込み不足で余計な要素を修飾語や接続詞でつなげることです。言い回しが単に冗長なこともあります。

下記に則った簡素な文を作ってから要素を追加していくと、簡潔な文を書けるでしょう。

1)自信の無さからくる逃げ
→言い切る・割り切る

・婉曲「かもしれない」「模様」→言い切る
・受動態「…と思われる」→能動態に
・列挙「簡潔で明確な」「など」→割り切って1,2に絞る

2)機能上の理由がない語句
→全削除して意味が通じるか試す
・修飾語→使わない
・接続詞→使わない
・指示語「その、もの、こと」→具体名に
・複文→短文か、句1つまで

3)単純に冗長な言い回し
→自分のクセやパターンを把握する
・名詞+するや体言止め→動詞に
・「すること」→名詞に
・否定形→肯定形に
・(括弧での補足)→地の文に

決裁者に読ませる文章術の極意 構造や要点を可視化する

各章の内容や関係が見てすぐ分かる見出しをつけます。「つまり」のような、その後が要点であると示す接続詞も、必要なら使います。

記号や書式で視認性を高める

不用意に使うと悪印象を与えるので、あくまで補助と肝に銘じます。なお、使う種類が多すぎると雑然とするので、3つ以内にします。

記号
・強調:◆、【】、「」
・列挙:•、1)、a.
・関係:→、=、:、*、()、/

書式 *環境に依存する
・太字、下線、文字の大きさ、寄せ、引用
*斜字や別フォント分かりにくく、色は煩雑になるので使いません

決裁者に読ませる文章術の極意 避けるべき4要素

セールス、メディア、SNSなど、他では用いられがちですが、経営者向けでは避けた方が良いことに気をつけましょう。

衒学:格言、喩え、気取った言い回し
→シンプルで直接的な表現にする

権威:Jobsが言った、FTに書いてあった
→信憑性は事実・数字と出所で示す

熱意:「何とかします」
→実現可能性は根拠が必要

こだわり:相手にはどうでもいい違い
→相手の関心・目的で割り切る

決裁者に読ませる文章術の極意 推敲が重要
〜頭を冷やして第三者の視点で見直す

書いたものを、読み手視点で見直すことは簡単ではありません。以下に推敲の視点を挙げてみます。

読み手の関心
・「自分が読むべき理由」が最初に分かる
・「自分が何をすれば良いか」が明確

外形
・構造と要点が見てわかるか
・全体や各章の分量が多過ぎないか
・短く簡潔な文か

文体
・視線や思考が妨げられるところはないか
・直感的に分かるか、易しくできないか
・無駄はないか、より簡潔にできないか

情報
・判断に必要な要素は全て揃っているか
・全ての疑問に即座に答えているか
・付随要素は分けてあるか

視点を切り替える小技

修正点に気づきやすくする、いくつかの方法を紹介します。

・環境を敢えて変える
(PC/スマホ、Word/メール、職場/自宅)
・時間を置き、頭を切り替え、改めて見る
・声を出して読む

不思議なことに、何度も見返したのに、基本的なミスを見落としていることがあるので、できれば他者にチェックしてもらいましょう。本稿でも「左から右」が「右から左」になっていたのに、指摘されて初めて気づきました。

 

決裁者に読ませる文章術の極意 さいごに

全体を整理すると、以下のようになります。

形式を整える
・読み手が期待する形式にする
・目的に合わせて情報を絞り、構成する
・速読する気になる分量にする

簡潔な文章にする
・修飾語は削る
・短文か、句1つの複文
・接続詞で文をつながない
・列挙しない、言い切る

見てすぐ意味の取れる文章にする
・平易で明確な表現
・文と文とのつながりが自然で明確
・構造と要点を可視化

今回の説明したのは、ビジネス用途の感情や遊びを削った文体ですが、目的、コンテクスト、ターゲットが異なれば文体も異なります。例えば以下の通りです。

・セールス:扇情的要素も必要
・広告:多様な人に、印象的に
・メディア:興味喚起、客観性
・マニュアル:誰でも同じ行動ができる
・文学:芸術性、娯楽性
・論文:方法と論理の厳密性
・法律:専門性、論理の厳密性

目的や前提を意識して、文体を考えるヒントになれば幸いです。

 

◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki

conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授

大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
 
 
 

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◆代表プロフィール

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株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温

マーケティングリサーチのプラットフォームの企業で、 最年少で事業部を立ち上げ、広告予算ほぼゼロで、国内トップの実績を達成。
中小・スタートアップ企業のマーケティングに関する構造的課題を痛感し、それを解決するため、株式会社まーけっちを創業。大手企業・国家機関・スタートアップなど100社以上の戦略支援を行い、コミットと売り上げ貢献成果に定評がある。上智大学外国語学部卒。

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