コミュニティをチームで円滑に運営するための5つの視点

*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
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非営利の場を運営することは、時にビジネスよりも難しいものです。雇用契約や指揮命令系統もなければ、お金という分かりやすい対価も出せないからです。

つい仕事と同じ発想で、自主的なはずの活動を、義務や責任かのようにしてしまうこともあります。ボランタリーな活動は家庭や仕事より優先順位は低いはずで、それらを犠牲にするような過負荷を感じると、運営メンバーは離れます。

本稿では私がいくつかのコミュニティを立ち上げ、運営に関与する中で感じてきた観点について、簡単に述べようと思います。

1)おもしろい

非営利である以上、「ライスワーク」にはなり得ません。よって、その場にいる人、学べること、活動そのものが、運営に携わる人にとって知的刺激となる、純粋に心地よく楽しいものでないと、自発的に続けようとは思えないでしょう。

多様な興味深い人をスカウトや公募で集め、良い関係を築くこと、そういった人々が共感し興味を持つような旗を掲げ、面白い活動をすること、それらを実現することが、負荷なく学びとなるような仕組みになっていることなどが必要でしょう。

2)互いに得るものがある

これからいっしょにやるけれども、別れるときに損はしないよ。ただし、その損というのは、金ということではない。何が得られるかわからないけれども、何か得るものを持ってお別れするよ。だから、得るものを与えてほしいとも思うし、また得るものを自分でもつくりたいと思う。
(藤沢武夫『経営に終わりはない』)

これは、ホンダの共同創業者で、技術者である本田宗一郎社長を経営面で支えた藤沢武夫副社長が、本田氏と事業を始める際に言った言葉です。

ボランタリーな場においても、主催者は、運営に貢献しれくれる人に対し、直接のお金以外、何かしら見合うものを与える必要があります。運営メンバーは、時間、専門性、信用などの提供に見合うものを期待するためです。互いの利益が明確で、見合うと納得できていることが、主催者と運営メンバーの持続可能な関係のベースになります。

経験上考えられる主な内容は以下のものです。実利的なものに限らず、心理的なものでも十分価値になります。下記に限らず人により千差万別なので、対話を通じて双方合意するのが良いでしょう。

・経験や成長
・自ら何か成果を出す
・情報や学び
・純粋に楽しい、好奇心を満たす
・実績、信用
・人との繋がり
・人の役に立つ
・必要とされ、認められる
・場への帰属、仲間意識

双方が見合うと納得していなければ、やりがい搾取、本来対価を払うべきプロをタダ働きさせている、相手に一方的な利益のある営業などをさせられた、と感じられるかもしれません。主催者当人がどう思おうと、相手にそう思われると運営が難しいことになるので、継続的に対話することが大事でしょう。

「運営メンバーの動きが悪い」という主催者の不満を時々聞きますが、まずは自分が相手に、自発的に運営に携わりたくなる魅力を提供できているのか、振り返る方が先でしょう。

3)公平である

人は不当に扱われることを好みません。場に貢献している自分と何もしていない人が同じに扱われること、社会的地位のある人が場に貢献していないにも関わらず優遇されることなど、規律が甘かったり、一般社会の雰囲気に引っ張られると、そのようなことに陥ります。

コミュニティの運営においては、基本的に参加者は平等であり、場の価値向上への貢献度に応じて公平に遇されるものがあるべき姿でしょう。

人によって使える時間も異なります。多くの時間を避ける人が偉い訳ではなく、その人なりの貢献を尊重する方が良いでしょう。

また、運営メンバー間の公平にも気を配る必要があります。名前は連ねているが何も貢献していないメンバーがいることは、積極的に活動しているメンバーに対する公平性の観点からも望ましくないでしょう。「月に1度は必ず運営協力や情報提供などで貢献する」など、一定の客観基準を設け、抵触する人は一旦通常メンバーに戻ってもらうなど、運営メンバーが100%の実働部隊である状態を維持する仕組みも必要です。

4)安心できる

この手のものは積極的・活発に行動・発信している人の声が大きくなりがちです。また、新参者だから、若いから、経験がないから、それほど活動していないからといったことで遠慮してしまいがちです。

顕在化していない不満や問題を把握するために多様な人の声を聞くことは必要ですし、公平さを保つためには、弱い立場になりがちな属性の人々の声にも耳を傾けなければなりません。

安心して声を上げられるという価値観の共有と、意見を述べやすいきっかけを仕組みとして入れるといいでしょう。

5)無理なく、都合よく

前にも述べたとおり、ボランタリーである以上、家庭や仕事の方が優先順位が高いはずです。できるといったことでも、突発的な事情で難しくなるかもしれません。その場合は、仕組みでバックアップすればよく、無理なら無理と早めにSOSを出していいのだということを、運営チーム内の共通認識にするといいでしょう。

どうしてもライフステージや仕事のサイクルで忙しい時はあります。その時は他のメンバーに予め言って、不可の配分を変え、必要なら人を追加するというのが、ボランタリーな場のマネジメントの考え方でしょう。

運営に参加できない時期が長く続くなら、いったん運営メンバーからは離れ、また望むなら再び参加すればいいことです。自分にとって十分得るものを得たから、でも構わないでしょう。前述のように、相思相愛が基本ですし、運営を離れることが悪いことや恥ずべきことではないはずです。

全員に当事者意識を求めることも現実的ではないと思います。人によっては自ら考え主体的に動く人もいるでしょうが、自分のベネフィットの範囲内なら頑張る人、求められる必要最低限のことならやる人など、運営への関わりといっても人によって様々です。それは双方納得ずくで、相手のスタンスに合わせて役割分担する方が、運営としては建設的な気がします。

規律と仕組みは損なわない

互いに都合良いということは、規律を軽視するということではありません。しばらく運営に参加できない、やるといったタスクがこなせなくなったというのは仕方ないにしても、そのことをすぐに表明することは求められます。他のメンバーの予見可能性やバックアップに要する時間を奪うことになるからです。

また、効率的運営を徹底するなら仕組みを標準化する必要があります。全員が同じツールを使うようにして、人による例外を認めないなど、合理的な強制力を働かせることを厭ってはなりません。

さいごに

上記は個人の経験や価値観に根ざしているので、人によっては違うスタイルが会う人もいるでしょう。自分に合わせて最適解を探してみると良いと思います。

また、人の巡り合わせや運というのもあり、いかに同じやり方でやろうとも、うまくハマる場合もあれば、噛み合わないこともあります。最初から完璧にしようとするより、何回か試行してみると良いかもしれません。

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参考:筆者の自著

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◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki

conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授

大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。
早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。
2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。
新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。
また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。
早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了
 

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◆代表プロフィール

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株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温

マーケティングリサーチのプラットフォームの企業で、 最年少で事業部を立ち上げ、広告予算ほぼゼロで、国内トップの実績を達成。

中小・スタートアップ企業のマーケティングに関する構造的課題を痛感し、それを解決するため、株式会社まーけっちを創業。大手企業・国家機関・スタートアップなど100社以上の戦略支援を行い、コミットと売り上げ貢献成果に定評がある。上智大学外国語学部卒。


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