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カオスマップでコンテンツマーケティング:最も重要なこと
2020.11.15
*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
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コンテンツマーケティング:カオスマップの作り方
自身が作成したカオスマップがメディアに掲載されて、業界の誰もが知るまで拡散した経験を元に、カオスマップについて徹底解説してみようと思います。
業界の商品やサービスをカテゴライズして一覧化したもの
そもそもカオスマップが何かというと、上記の定義となります。ポイントは「カテゴライズ」と「一覧化」で、単に羅列されているだけでは情報としての意味がありません。一覧とは、読み手にとって過不足ない状態であるべきで、つまり、多すぎても少なすぎてもよくありません。
「読み手」の定義が最も重要
では「読み手」とは誰か。すぐ思いつくところでいえば、その業界の経営や事業開発に携わる人でしょう。
既存プレイヤーであれば、自分たちのビジネスモデルを脅かす者は誰か、自社の強みを活かして新規に参入できる隣接市場はないか、などを考える素材にするでしょう。
スタートアップなどの新規参入者であれば、自分たちに参入しようとしている市場はどこなのか、どんなプレイヤーがいるのか、隣接市場も含めてどのような構造になっているかなどを考える材料となります。
読み手とその関心や目的が定まることによって、どこまでのサービスをピックアップし、どこからは対象外とするかが決まります。
時々見る残念なカオスマップの典型として、範囲が表面的すぎる場合と、範囲が広すぎる場合とがあります。
例えば不動産テックのマップの読み手は不動産業界の人々なので、契約手続きを効率化する電子契約や、物件管理業務を効率するスマートロック、物件売買や賃貸のビジネスをだいたいする可能性のある店舗や住居のシェアリングなど、自身のビジネスの収益構造を良くも悪くも変えるものを知りたいはずです。
それぞれ通常はリーガルテック、IoT、シェアリングエコノミーといった別領域にカバーされるものですが、読み手の関心から考えれば入れるべきものと考えます。
よくある残念なカオスマップは、このような読み手のビジネスモデルへの理解が浅く、本来カバーすべきものが入っていなくて、単に「XXテック」など、表面的な検索で出てきたものだけで作られているものです。そういうものは業界の人から見て「おっ!」と思う発見がないのでスルーされます。
逆に範囲が絞れておらず、過剰なものもあります。マップに載せるロゴの数は多くても300くらいではないかと思いますが、それを遥かに超える企業を載せているものも見たことがあります。それは情報量が過剰で、カテゴリも意味をなしていないので、読み手にとって価値がないと考えます。マップではなくリストにするか、より対象を絞って、適切な情報量と範囲にすべきでしょう。
「読み手」が1つではないのが難しさ
問題は、その「読み手」とは1つの属性に絞れないことです。不動産テックのマップを作った際に気づいたのは、「不動産業界」といっても様々なビジネスモデルがあります。不動産の売買・仲介・メディア、不動産金融、住宅、商業施設、オフィスなど物件種別によってもビジネスは異なりますし、開発業者なのか二次流通なのかでも性質は異なります。リノベーションやプロパティマネジメントなど、周辺サービスも数多くあります。
つまり、不動産テックのスタートアップだけを想定しても意味がありませんし(そもそも上記に該当するぞれぞれのをテクノロジーで破壊しようとするものなので、自明のカテゴリがない)、不動産デベロッパーのみでは対象が狭すぎます。
また、事業会社だけではなく、その分野の専門家、例えば不動産なら、弁護士、不動産鑑定士などもいます。コンサルタント、アナリスト、キャピタリストなど、様々なプロフェッショナルもいるでしょう。場合によってはアカデミックの人々も見るかもしれません。
それら複数のプレイヤーの視点で複眼的に見なければ、ごく僅かの層にしか響かないマップにならざるを得ません。
カバーすべき多様な「読み手」の可能性を想定し、そういった人々がどんな理由で、どんなことに関心を持つのか、その最大公約数はどこか、どこまでの読み手を対象として、どこからは対象外、あるいは優先順位を下げるのかなどを掘り下げていくと、素人目に見てわかりやすいだけでなく、玄人が見ても「よくわかっている」と感じられるマップになります。
「発見」が本当の価値
ターゲットたる「読み手」がマップから得る価値は、自分で調べ、分析し、まとめる工数を削減することであり、さらに、そこから新たな機会や脅威の可能性を発見することです。
業界のなかで経営や事業のことを考える人にとって、マップにあるカテゴリーや企業の大部分は知っていることが普通でしょうが、カバーすべき範囲を漏らさず、その中で調べ尽くすまでしていることは少ないでしょう。
日々の仕事の中でなんとなく頭の中に入り、大まかに分類している記憶を、明示的・包括的にカバーして分類された情報にした、その差分が一つの価値となります。人によっては気づいていなかった未来への示唆を見出すかもしれません。そこまでいけたものは、非常に価値があると言えます。
逆に言えば、単にちょっと調べただけで、深掘りしたとまで言えないものを並べただけならば、ほんの少しの作業工数分でしかななりません。そもそも頭の中に入っていて、なんの発見もない、わざわざ可視化するまでのものでもないものなら、見る価値もありません。
調べながら境界が見えてくるのが実情
上記はもちろん最終的な理想形です。実際、不動産業界にいる人であっても、全てのカテゴリーを最初から知っているわけではありません。調べていく内にビジネスモデルやエコノミクスを理解し、プレイヤーの競争戦略が見えてきて、関心がわかってくるのです。
それが実際のプロセスですし、考えて調べることでそれがわかることが、実は作ることの最大のベネフィットだったりもします。
カオスマップでコンテンツマーケティング:5つの基本プロセス
カオスマップとは「業界の商品やサービスをカテゴライズして一覧化したもの」です。その作成手順は、大まかには下記の通りです。
1)”業界”=範囲を決める
2)プロダクトを調べてリストアップする
3)調べたプロダクトをカテゴリで分ける
4)基準に基づき掲載するプロダクトを取捨選択する
5)1枚のスライド上にプロダクトのロゴを配置する
範囲:読み手を定め、範囲を絞る
なぜこのカテゴリはカバーされ、別のカテゴリは対象外なのか、明確な境界とその根拠がなければ、マップは恣意的にロゴを羅列しただけのものになります。
その境界を決めるのが、「読み手」ですが、それは1つに定まらないことが多いです。例えばEdTechのマップをつくるとしたら、EdTechスタートアップだけではなく、教育サービス事業者、学校の経営者・スタッフ、教員、研修会社、受講者やその親(子供の場合)など事業サイドのプレイヤーから、VCなどの金融機関、コンサル、役人、研究者など、周辺業界の関係者も見る可能性があります。
それら潜在的な読み手のどこからどこまでを対象とするか、その人々は何に関心を持つのか、それはなぜかまで考えます。例えば、既存の塾の経営者なら、オンライン教育など自身のビジネスモデルを根本から変えるものは、機会であれ脅威であれ、把握しておきたいはず、といったことです。
もちろんこれらは最初から明確に定められる訳ではありません。自分が未経験の業界なら尚更です。ただ、読み手が誰かを具体化しておけば、その立場にある人が関心を持つことは調べる内に自ずと分かってきて、範囲を定める根拠となります。
実際調べていくと、このプロダクトやビジネスモデル入れるべきか否かの判断に迫られることが多々あります。その際に、これは想定する読み手の誰の関心にかかるのか、それはその人にとってどのような機会や脅威になるからか、と考えると、それが判例のように積み上がり、境界を決める判断基準となっていきます。
調査:カテゴリを深掘りしながらリストアップ
EdTechのカオスマップをつくるとして、”EdTech”という検索ワードで出てくるものだけをピックアップしても、価値あるマップにはなりません。様々な専門用語で調べたり、AIなど汎用的な要素技術に関わる企業の提供サービスが教育産業の特定分野に破壊的創造を起こすこともあり得、それらは表層的なワードで調べただけではカバーできないからです。
さらに深掘りして、業界の専門的なところまでカバーしつつ、ビジネスモデル、バリューチェーン、要素技術などの影響を把握しないと、プロにとっての情報価値あるマップにはなりません。
リスト化はビジネスモデルをイメージしながら
そうしてプロダクトをリストアップしていくことになりますが、その際、単にホームページや記事にある基本情報をリストの定められた欄に作業的に入れていくのではなく、一手間かけて、そのプロダクトのビジネスモデルや、ディスラプトや効率化する対象などを考えてみると、調べることが単純作業化せずに済むだけでなく、後で分析・カテゴリ分けする際に的確な判断ができるようになります。
調査に慣れている人なら頭の中で考えるだけで良いですが、そうでないなら最初の内は都度図示しても良いかもしれません。これは目的や掛けられる時間や工数によりますが、市場を理解するのには役立つものです。
リストの中にも「カテゴリ」欄を設け、仮置きでいいので、根拠を持って都度カテゴリを決め、いくつかまとまった段階で見直す、ということを重ねていくと、徐々に頭の中にカテゴリの全体像が浮かび上がってきます。
ちなみにカテゴリは最終的には1~2階層にしますが、調査の段階では多いと5階層くらいまでいくことがあります。
分類:「ビジネスモデル」で分けるのが基本
マップは情報の一覧性に価値があるため、厳密にApple to Apple(比較対象のレベルを合わせる)やMECE(漏れなくダブリなく分ける)である必要はないと考えます。
カテゴリをビジネスモデルで分けるということは、カテゴリ間で明確な違いがあるので、明確な違いが言えなければなりません。例えば、このカテゴリは広告モデルで、もう一つのカテゴリはマーケットプレイスのモデルで、扱う商材は同じだが、ビジネスモデルが明確に違う、といったような説明です。
ビジネスモデルの分類は、業界によってそれほど大きく異なるわけではないので、一般的なフレームワークなどをベースに、簡単に分ける自分なりの枠組みを持っておくと便利です。以下は私が不動産テックのカオスマップを作った際の記憶を元に作ったものです。
「調べ尽くした」時が調査の潮時
リストアップは何社やれば十分かという基準は定められません。範囲により異なるからです。読み手の視点であらゆる角度(キーワード)で調べ尽くして、もう何も出ないだろう、というところまできたら、それが終わりの目安です。それは調べた当人が感じることです。
数で言えば、150〜200くらいあれば、そこから取捨選択してもパッと見で情報価値のありそうな密度のマップができると思います。ただしあくまで本質は中身の価値であり、数があればいいというわけではありません。
選別:基準を設けて「足切り」
最初のマップは選別するというより、あまりにも情報がなく、実体がない、もう継続していなさそう、といったものを落としていくのが現実的な対応でしょう。
よく資本金や売上で基準を定められないかと考える人もいますが、スタートアップの情報は取れないことの方が多いので、考えとしては良さげに聞こえますが、実現可能性の低いものです。
配置:1枚のスライド上でのバランスを調整する
マップは1枚のスライドの上に載せなければなりません。カテゴリを分けていくと、特定の分野に偏ったりします。不動産なら、資本がいるものは少数寡占になりやすく、メディアのような誰でもできるものは数多くのプレイヤーがひしめく、といった状況です。リストの数そのままでやると、1つ2つのカテゴリがマップの大半を占めることになりかねないので、大きなところは分割したり絞ったりして、カテゴリ間でサイズがアンバランスにならないように調整します。
ある業界で、特定のビジネスモデルに属する企業が圧倒的に多いという場合は、そこを商材の違いなどで分割し、一方で、プレイヤーの数が少ない分野は似ているが違うビジネスモデルを1つにまとめるなど、厳密性を追求してカテゴリが過度に細分化され見にくくなるくらいなら、ざっくりとしたくくりにして見やすくする方を取るべきでしょう。
2軸で分けようとする試みもうまくいかないことが多いです。マップには隙間が許されないので、縦軸・横軸の座標の置き場所に意味を持たせることができません。2軸で綺麗に分けられるのは、何かのメッセージを明確にするため、比較対象を意図的に絞った場合であって、網羅的にピックアップしたもので2軸に分けられることは、基本あり得ないからです。
とはいえ、配置に何かしらの意味を持たせたいとも思いますので、例えば、右から左に向けて、仕入れサイドのビジネスから販売サイドのものを並べるとか、近しいビジネスを近くに配置するとか、そのくらいで十分です。
カテゴリは基本1階層
調べた当人はどうしても厳密に考えてしまい、違うものを同じカテゴリに入れたくない気持ちになります。そうするとついカテゴリの中にサブカテゴリを作ってしまいがちですが、これは基本読み手にとって見にくくなるだけの自己満足の行為です。
もちろん例外もあります。私が「良いマップ」の事例でよく挙げる「副業カオスマップ」は、それが有効になっている例ですが、それは異なる読み手の視線誘導の意図が明確にあるため、見やすいものになっているからで、自己満足に因るものではありません。
公開すると情報が寄ってくる
考え抜いて調べ切って作った質の高いマップであれば、業界の関係者にすぐに行き渡るかもしれません。そうすると色々な反応があります。そのマップが良いものとみなされると、載ったことを嬉しがるスタートアップの経営者が、Twitterで「マップにのった!」と呟いたり、プレスリリースを打つところすらあるのを見たことがあります。何の権威もない、どこの誰が作ったともしれないマップなのにです。
一方で、「うちを載せてほしい」といった連絡も時々きます。「ここの会社も載せるべきだ」という老婆心に満ちた提案もあります。どんなに調べ尽くしたつもりでも、最初は必ず抜けがあるので、そういった情報はありがたいものです。すぐにマップのアップデートはできないものの、次のバージョンを出す際に入れてあげると返し、実際そうすると喜ばれます。
企業だけでなく、メディアやイベント主催者、時にはVCから連絡が来ることもあります。寡聞にして、クレームを言われたと言う話は聞いたことがありません。何の権威もない新興企業が作った、根拠が明確でないマップであっても、掲載されることは嬉しいことであり、むしろ外されることは切ないことなのでしょう。興味深いことです。
参考:筆者の自著
色々考えながら実践してきた場づくりのを方法論を本にまとめたものがこちらです。
”オンラインセミナーのうまいやり方””
◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki
conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
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◆代表プロフィール
株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温
マーケティングリサーチのプラットフォームの企業で、 最年少で事業部を立ち上げ、広告予算ほぼゼロで、国内トップの実績を達成。
中小・スタートアップ企業のマーケティングに関する構造的課題を痛感し、それを解決するため、株式会社まーけっちを創業。大手企業・国家機関・スタートアップなど100社以上の戦略支援を行い、コミットと売り上げ貢献成果に定評がある。上智大学外国語学部卒。